アルミナスラリーに温度応答性ポリマーのPNIPAMを添加して,刺激応答性スラリーを調製した.調製したスラリーを蒸留水と半透膜を解して接触させ,吸水実験を行った結果,1日当たり1g/cm2の吸水を確認した.その後,40℃まで刺激応答性スラリーを加温すると,アルミナ粒子及びPNIPAMが疎水性相互作用により凝集し,容易に清澄な水を分離することができた.この操作を3回繰り返して行い,3回とも刺激応答性スラリーが吸水することを確認した.吸水量は1回目に比べ,2,3回目は減少したが,これは1回目の加温時の固液分離操作において,沈降しきらなかった微粒子とPNIPAMが分離した水の中に混入しており,浸透圧が低下したためと考えられる.しかしながら,2,3回目の吸水量はほぼ等しく,原料の粒子径をより精密に制御し,あまりにも細かい粒子が入っていないようにすれば,繰り返し操作を全く同様に行うことができると期待できる. またいずれの場合も加温により粒子とPNIPAMは凝集体を形成し沈降速度が大きくなったため,簡単に純水を分離できた.2,3回目に分離した純水中に残存するアルミナ粒子及びPNIPAMの量はごく少量であった.以上の結果から,刺激応答性スラリーは容易に再利用可能な新しいドロー溶液としての可能性があることを示す事ができた.今後刺激応答性スラリーの調製条件を最適化していくことによって,実用可能なドロー溶液と成り得るかを検証していく.
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