微生物が合成するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は生分解性プラスチックとして期待される。水素細菌Ralstonia eutrophaは糖や二酸化炭素を唯一の炭素源として硬くて脆いポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、P(3HB)を合成する。炭素数4~12の3-ヒドロキシアルカン酸(3HA)をモノマー単位とするP(3HB-co-3HA)共重合体は丈夫でしなやかな物性を示す。この共重合PHAを、R. eutrophaの組換え株により二酸化炭素から合成することが本研究の目的である。 Pseudomonas sp. 61-3由来の低基質特異性PHA重合酵素(PhaC1)、3HA-ACP:CoAトランスフェラーゼ(3HA-ACPチオエステラーゼ)(PhaG)、3HBユニット供給系酵素(PhbAB)の遺伝子に加え、Pseudomonas aeruginosa の推定3HA-CoAリガーゼ遺伝子を大腸菌に導入した組換え株を作製した。その組換え株はグルコースを唯一の炭素源として、炭素数8および10の3HAユニットが5.4 mol%取り込まれたP(3HB-co-3HA)を合成した。この共重合体の破断伸びは186%であり、P(3HB)の5%と比べて丈夫でしなやかな素材であった。また、一連の研究により、脂肪酸合成経路を経て3HAユニットを含む共重合体を合成するには、PhaG酵素に加えて3HA-CoAリガーゼが必要であることがわかった。 次に、組換えR. eutrophaを作製し、糖あるいは二酸化炭素を炭素源として培養を行ったところ、合成されたPHA鎖中の3HA分率は数mol%以下であったため、さらなる分子育種を進めている。
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