研究課題/領域番号 |
25550097
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
根本 修克 日本大学, 工学部, 教授 (30237812)
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研究分担者 |
小林 以弦 日本大学, 工学部, 講師 (50267027)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 電極触媒 / 酸素還元 / 金属フタロシアニン / 脱白金 / 炭素触媒 |
研究概要 |
本研究は,カルボキシ基およびアミノ基を有し,鉄・コバルト・ニッケルといった非貴金属含有フタロシアニンを用いて,これらを重縮合・高分子化して得られる金属フタロシアニン複合体を水素気流中で焼成し,ナノスケールで異種金属を配置した炭素担持触媒を創製し,その空気極用触媒能について検討することを目的とし,ナノスケールで配置された異種金属が協同効果を効率よく発現することにより,現存の高価な白金触媒の代替触媒となる新規触媒の開発を目指すものである。 平成25年度は,鉄・コバルト・ニッケルなどの非貴金属を含有し,カルボキシ基やアミノ基を有する金属フタロシアニンを用いて,カルボキシ基とアミノ基間の重縮合によるアミド結合形成を通して異種金属を有する金属フタロシアニン複合体を合成した。得られた金属フタロシアニン複合体を水素気流中,焼成し,異種金属を担持した炭素触媒を創製する。得られた炭素触媒の固体高分子型燃料電池空気極用触媒能について,電気化学的測定(回転ディスク電極を用いた対流ボルタモグラム法)により,酸素還元反応の開始電位と酸素還元の限界電流値から評価した。 テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシコバルトフタロシアニン複合体(P1),テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシ鉄フタロシアニン複合体(P2),ポリ(テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシニッケルフタロシアニン複合体(P3)を水素気流中,900℃において3時間焼成して得られた触媒を評価したところ,コバルトのみを含む触媒がもっとも活性が高いことが明らかとなった。さらに,得られた触媒を王水による処理を行ったところ,著しく活性が向上することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,鉄・コバルト・ニッケルなどの非貴金属を含有し,カルボキシ基やアミノ基を有する金属フタロシアニンを用いて,カルボキシ基とアミノ基間の重縮合によるアミド結合形成を通して異種金属を有する金属フタロシアニン複合体を合成した。得られた金属フタロシアニン複合体を水素気流中,焼成し,異種金属を担持した炭素触媒を創製する。得られた炭素触媒の固体高分子型燃料電池空気極用触媒能について,電気化学的測定(回転ディスク電極を用いた対流ボルタモグラム法)により,酸素還元反応の開始電位と酸素還元の限界電流値から評価した。 テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシコバルトフタロシアニン複合体(P1),テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシ鉄フタロシアニン複合体(P2),ポリ(テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシニッケルフタロシアニン複合体(P3)を水素気流中,900℃において3時間焼成して得られた触媒を評価したところ,コバルトのみを含む触媒がもっとも活性が高いことが明らかとなった。さらに,得られた触媒を王水による処理を行ったところ,著しく活性が向上することが明らかとなった。 この活性は,従来から用いられている白金担持型炭素触媒と比較した場合,還元電位ではほぼ同等の値が得られ,電流値は白金担持型炭素触媒にやや劣る程度の活性であることから,さらに触媒の処理方法や用いる金属フタロシアニンの金属を変更することにより,さらなる活性向上が期待できるものと考えられる。したがって,当初目的である脱白金触媒の創製の可能性が見出されたことで,本研究の達成度はおおむね順調に進展しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシコバルトフタロシアニン複合体(P1),テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシ鉄フタロシアニン複合体(P2),ポリ(テトラアミノコバルトフタロシアニン-テトラカルボキシニッケルフタロシアニン複合体(P3)を水素気流中,900℃において3時間焼成して得られた触媒を評価したところ,コバルトのみを含む触媒がもっとも活性が高いことが明らかとなった。さらに,得られた触媒を王水による処理を行ったところ,著しく活性が向上することが明らかとなった。 この活性は,従来から用いられている白金担持型炭素触媒と比較した場合,還元電位ではほぼ同等の値が得られ,電流値は白金担持型炭素触媒にやや劣る程度の活性であることから,さらに触媒の処理方法や用いる金属フタロシアニンの金属を変更することにより,さらなる活性向上が期待できるものと考えられるため,平成26年度は,以下の項目について検討し,さらに高活性な触媒創製を行う。 1.フタロシアニン複合体合成の際に用いる金属フタロシアニンの金属を変更する。 2.フタロシアニン複合体の焼成条件のさらなる最適化を行う。 3.焼成後に得られた炭素触媒の酸処理条件の最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
回転リングディスク電極装置(ビー・エー・エス(株)・RRDE-3A)およびバイポテンショスタット(ビー・エー・エス(株)・モデル2323)が当初見積額よりも安価で入手することができた。 さらに,電気化学測定用の電極について,同一仕様,同一規格のものでより低価格の電極を購入することができた。また,電気化学測定に用いる試薬及び合成用の試薬,器具についても同一規格のものでより低価格のものを選定・購入した結果,使用額が当初使用予定額よりも下回った大きな理由である。 平成26年度は,平成25年度に得られた結果をもとにして,金属フタロシアニン誘導体の合成においてもさらに数多くの金属を用いる予定である。異種金属フタロシアニンを合成するためには,比較的高価な金属含有試薬を購入する必要が生じる。 さらに,得られた金属フタロシアニン複合体を水素気流下で焼成し,触媒を創製する工程においても,詳細な数多くの触媒焼成条件検討が必要となり,それに伴い,平成25年度以上に多くの電気化学測定試薬が必要となる。また,触媒処理条件の検討を進める際にも,平成25年度以上に多くの電気化学測定試薬が必要となるため,当初予定額よりも多くの物品費がかかることが予想される。
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