研究課題/領域番号 |
25550098
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
久保 幹 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60249795)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー |
研究概要 |
1.熱溶菌性糸状菌の生育に適した木質バイオマスの選定及び固体培養における最適生育条件の確立 全炭素(TC)および全窒素(TN)を指標にして、熱溶菌性糸状菌の固体培養の生育に適した木質を中心としたバイオマスの選定を行った。炭素源としては、竹、木質チップ、稲わら、水草を用いた場合に於いて良好な生育を示した。特に水草は熱溶菌性糸状菌の生育に最も適していることが明らかとなった。一方、窒素源としては、余剰バイオマスを中心に大豆ミール、魚粉、米ぬかを用い、C/N比をコントロールし、固体培養における最適生育条件を検討した。その結果、C/N比で15~25の範囲に於いて良好な生育を示すことが確認された。最終的に、水草と米ぬかの組み合わせが良好で最適条件を確立した。最適条件においてグルコース生成を行ったところ、約6g/Lのグルコース生産が確認された(これまでの約6倍)。 2.熱溶菌メカニズムの解明 糸状菌の生産する酵素がグルコース生成に関連しているか否かを調べるため、生菌菌株と殺菌菌株を使いグルコース生成を調べた。殺菌菌株からグルコースが生成されなかったことから、生菌が作る酵素が関連していることが示唆された。また、溶菌後の溶液上清を用いたグルコース生産を行ったところ、熱処理なしでグルコースの生成が確認された。これらの結果から、糸状菌に熱をかけることにより酵素が生産され、この酵素が菌体を分解しグルコースを生成することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.熱溶菌性糸状菌の生育に適した木質バイオマスの選定及び固体培養における最適生育条件の確立 各種余剰バイオマスを用い、熱溶菌性糸状菌の固体培養の最適条件を確立した。また、最適C/N比に関しても解析し、最適条件を決定した。これらの結果から、再現性を獲得できる固体培養手法の確立ができたと考えている(計画した目標達成)。グルコースの生成に関しては、約6g/Lを達成し、当初の約6倍に到達した。この数値は、実験室レベルとはいえ、かなり高い数値であり、現段階では目標を達成していると考えている。 2.熱溶菌メカニズムの解明 熱溶菌メカニズムに関しては、酵素が関与していることを明らかにした。また、本酵素は熱により誘導されることが判明した。具体的には、高温下(55℃)において、本菌株は、自己溶菌を引き起こす。これは、高温下で自己溶菌酵素が菌体内で発現する。次に自己溶解酵素が細胞壁を分解して自己溶菌が起こる。細胞壁の分解産物がグルコースである。グルコース生産はこの経路で進んでいることが示唆された(目標達成)。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度の研究成果により、下記の研究課題が明確になった。 (1)酵素のキャラクタリゼーション(2)カビバイオマスの大量調製技術の構築(3)溶菌酵素の産生を増大させる菌株の育種(4)新規溶菌性糸状菌の探索 上記の4課題を中心に2015年度の研究を遂行する。具体的な推進方策を下記に示す。 (1)酵素のキャラクタリゼーション : 酵素の分離精製および分子量等の生化学的解析を実施する。(2)カビバイオマスの大量調製技術の構築 : 固体培養の最適条件を用い、5㎏スケールでの培養を実施し、実用化へ向けたグルコース生産プロセスの基盤開発を実施する。(3)溶菌酵素の産生を増大させる菌株の育種 : 各種変異処理を実施、熱溶菌酵素の生産または活性を10倍程度上げる変異処理を実施する。(4)新規溶菌性糸状菌の探索 : 実用化を目指し、新たな熱溶菌性糸状菌のライブラリーを構築する。(5)その他 : 実用化へ向けた経費シミュレーションを実施する。
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