熱溶菌糸状菌は、新規に自然界より分離した菌株であり、木質バイオマス上で旺盛に生育する。また、55℃の熱処理をすることにより、グルコースを産生するという、非常に有用な菌株である。 本熱溶菌糸状菌を用い、最適な木質バイオマスの条件を調べた。その結果、全炭素量(TC):全窒素量(TN)の比で、熱溶菌糸状菌の生育が大きく変動することを見出した。また、最適な木質バイオマスの条件(C/N:15~20)を確定した。 木質バイオマスからグルコースを産生するマスバランスを測定するため、木質バイオマス上で生育する糸状菌バイオマス量を測定する手法を確立した。具体的には、エルゴステロールまたは18srDNAを指標とする本菌株のバイオマス量を測定する技術構築を行った。本技術を用い、木質バイオマス上で生育する熱溶菌糸状菌バイオマス量から産生するグルコース量に関するマスバランス解析を行ったところ(最適条件下)、木質バイオマスの約20%が熱溶菌糸状菌に変換され、また熱溶菌糸状菌バイオマスの約30%がグルコースに変換されることが明らかとなった。 最終的に、木質バイオマスと熱溶菌糸状菌から得られたグルコースを用いて、清酒酵母を用いたエタノール生産を行った。その結果、良好なエタノール生産が確認され、最終的に100gの木質バイオマスから15.3㎎のエタノールが生産された。本研究により、木質バイオマスの新規エネルギー生産プロセスの基礎データを得ることが出来た。
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