研究課題/領域番号 |
25550100
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
結城 俊哉 筑波大学, 人間系, 准教授 (20306377)
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研究分担者 |
手打 明敏 筑波大学, 人間系, 教授 (00137845)
上田 孝典 筑波大学, 人間系, 准教授 (30453004)
池谷 美衣子 筑波大学, 人間系, 特任助教 (00610247)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / リジリエンス / 経験の記録化 / コミュニティ復興 / 被災地域 / 経験の記録化 / ライフヒストリー |
研究概要 |
昨年度は,2011.3.11 の東日本大震災以後,我が国が直面している震災後社会のあり方として「被災した住民の生活再建を可能にするコニュニティの創成とは何か」という基本課題から取り組んだ。本研究の特徴は,震災・津波及び原発事故被害による被災経験からの復興・再生に向かう新しいコミュニティ概念としてリジリエンス(回復力)の視点から「リジリエント・コミュニティ(復興力を発揮する地域)とは何か」を構想しそのあり方を明確化する国内外でのフィールドワーク調査を基本とした基礎的研究である。したがって,平成25年度は,以下の2つの研究班を中心に展開した。まず,震災後社会におけるリジリエント・コミュニティの基盤解明の状況把握を中心に着手する【研究1】(地域リジリエンス研究班)は,①津波被害の甚大であった宮城県亘理郡山元町を研究フィールドの拠点とした。具体的には,定期的な住民集会(土曜日の会)への参加(7回)・復興街作りワークショップへの企画及び実施参加(3回),②住民主体のコミュニティ復興計画への協力参加(町民提案書作成への協力) ③地域青年団・災害コミュニティFmラジオ局(りんごラジオ)・障害者の福祉支援施設(例:工房 地球村)との交流の実施,④石巻市における地域復興再建に関わっている公民館活動をベースとした支援者達との交流による定点観測的関わり等を通して被災地における復興の現状と支援課題(ニーズ)調査(ヒヤリング)を実施した。【研究2】(被災住民調査研究班)では,被災地における「被災経験の記録化プロジェクト」(震災前・後の生活の変容を中心としたライフヒストリー研究)を被災地域(仮設住宅生活者等含む)の現地再建住民の協力を得てインタビュー調査(生活経験の記録化)を大学の研究倫理申請許可を得た上で9月・10月・11月・12月・3月の計4回(6人)に実施(継続予定を含む)した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由としては,初年度でもあり,震災被災地でのコミュニティ・ベース(地域基地)となる地域の被災住民との関係作りについてかなりの時間を要したこと。さらに,住民の生活心情への配慮や生活再建に向けた取り組みに対して,阻害することないように十分な配慮と時間をかけ共感的な参与観察を実施したことにある。特に,リジリエンス(回復力)の解明資料(質的データ)となる「経験の記録化プロジェクト」として始めたインタビュー調査への住民理解を得るために,倫理的配慮も含めて極めて慎重にオリエンテーションを住民集会の際に数回程おこなっため,手続き作業も含めインタビュー調査の実施が遅れ,研究プロジェクトの開始が,年度の後半からとなったことがある。さらに,当初は,ドイツから脱原発運動の市民団体からのゲストを迎えての交流シンポジュウムを企画したが,先方との都合が合わず(ゲスト側の都合で来日が中止となり)に実施できなかったこともあった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,風化が懸念されている震災経験のアーカイブ化を目的として,1)「震災の経験の記録化プロジェクト(インタビュー調査)」をさらに継続展開する。場合によつては,定期的に同一の被災者を中心にインタビューを継続実施し,時間の経過の中で,リジリエンスの変容過程(定点観測方式)を描き出すことに取り組む予定である。分析方法については,質的分析方法とリジリエンス尺度とのトライアングレーション方式を検討する。2)当初は3年目の計画の中に盛り込んでいた研究企画だが1年前倒しをして平成26年度内で「震災・津波を中心とした自然災害とアジア諸国(インドネシア・タイ・ベトナム等)での対応」焦点化した現地訪問を実施して現地視察と住民へのインタビュー調査を計画実施する予定である。現在,企画及び準備調整の作業の中である。3)昨年度からの継続でもある研究として震災コミュニティにおける被災住民活動の進展について交流を深めつつ参与観察と活動協力を展開し被災地住民の復興再建のための生活ニーズの明確化に取り組む予定である。平成26年度は,研究代表者の所属変更があったが他の研究分担者・連携研究者との研究事業の進度状況に注意しなが,研究プロジェクトに遅れを来たさないよう計画的に研究事業を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
理由としては,現地への訪問回数が,予定した回数より下回っていたことがあります。さらに,被災地訪問の際,宿泊先として現地再建を目指している住民の方の好意で居宅に泊めていただくことができたため,宿泊費がかからずに移動の為の国内旅費として仙台駅までの往復の新幹線代金と現地での移動の為の車のレンタル料金だけで,極めて安く旅費の経費が済んだことがある。さらに,海外からゲストスピーカーを招聘するための経費が,ゲストの来日が先方の都合でキャンセルとなってしまったために,そのための予算を執行することなく済んでしまったことにあると思います。 今年度の使用計画としては,1)現地への訪問回数を上げる地域住民へのインタビュー調査の回数(経験の記録化データの集積(予定:可能な限り月2回の頻度)を上げることで被災地域住民の方々との地域ネットワーク環境を強化する。2)海外現地訪問視察調査(アジア地域を中心として)を実施し,「自然災害とコミュニティ再建」について現地取材と資料収集のため訪問調査チームを組織し前年から繰越となった科研(基金)費用を執行する計画である。3)日本における自然災害(地震・津波・台風・豪雨等)の「被災各地の経験の交流シンポジュウム」等を企画して自然災害から立ち直る地域(リジリエント・コミュニティ)基盤のあり方について検討を進めていく計画である。
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