研究課題
昨年度は、2011年3月11日東日本大震災以後の被災地域住民が形成しているコミュニティ形成、すなわち生活の復旧から復興への歩みについて個別事例及び、住民組織の進め方に着目した研究を展開した。具体的な取り組み方としては、【研究1】(地域リジリエンス研究班)は、震災と津波被害が甚大であった宮城県亘理郡山元町でのフィールド・ワークを基本として,震災地域の住民組織(毎週土曜日に開催される<山元町復興土曜日の会>への定期的な参加を行ない、地域住民の組織化の定点観測としての参与観察を実施した。具体的な活動としては、1.地域住民を絆ぐテラカフェ(普門寺が実施)へ参加する被災住民との交流と体験の聞き取り。2.継続的な関わりとしてのカフェ地球村(障害者が運営するコミュニティ・カフェ)との交流。3.地域住民を対象とする「みんなの図書館」活動への参加等の交流実践を進めた。【研究2】(被災地住民調査班)では、今回も継続的な取り組みとして震災被災地域で生きる住民の「被災経験の記録化プロジェクト」として地域の中で生活再建をしながら地域住民を組織する力(=リジリエント力のある)をキーパーソンを対象としたインタビュー調査を実施し生活経験のナラティヴ(語り)からのリジリエンス(回復力)の構成要件について研究を展開した。
3: やや遅れている
今年度は、研究代表者の所属移動に伴い研究チームの編成作業にいささか時間を要することになった。そのため、2年目の取り組みが夏期以降からはじまるというタイムスケジュールとなったことに遅れの原因がある。さらに、フィールド(研究実践の拠点)としている山元町における地域住民の動向に関しても、仮設住宅から復興住宅への生活移行という時期つまり、仮設住宅という次第に形成されてきたコミュニティが、新たな復興住宅コミュニティへの移行再編という住民意識の微妙な時期と重なったこともある。そのため、インタビュー協力者への働きかけにも慎重な対応が求められ、生活経験の「語り」プロジェクトの進行に関する遅れにもその一因があると考えている。
今年度が本研究の最終年でもあり、震災・津波の被災地域で生きる住民の生活記録のアーカイブ化(記録保存化)を研究方針として積極的に取り組みたい。具体的には、4月・5月・6月・7月の4ヶ月間に、インタビュー協力者からの「震災被災と生活経験の語り」の記録化作業を集中的に進める。8月以降は、研究チームによる研究会を数回実施、秋以降には、「3.11震災以後の日本社会が自然災害と向き合うためのリジリエンスを考えるシンポジュウム」を企画し、この間、被災地のフィールドで関わった地域住民の参加と交流をすすめ、「震災後地域社会を生きる力」(仮)という震災地域住民へのブックレットを作成して、仮設住宅や復興住宅で暮らす被災者の方々への配布と報告書の作成を目指したい。
理由としては、研究代表者及び研究分担者の転属にともない教育研究環境が軌道になるまでに時間を要したため、現地(フィールド)への訪問回数が予定よりも下回ってしまったことがあります。さらに、被災現地での住民との交流の中で、宿泊先として格安で泊めていただくことも多くあり、実質的には、往復の交通費及び現地での移動のためのレンタカー代金のみで費用の使用が済んでしまったこともその理由があります。
今年度は、1.復旧から復興へ向かう過渡期におかれている被災地(フィールド)へのきめ細かく訪問することにより、インタビュー調査の事例を積み重ねること。2.シンポジュウム企画「3.11震災以後の日本社会が自然災害と向き合うためのリジリエンスを考えるシンポジュウム」を企画実施することで、被災地(東日本震災地域と他県における震災被災者等)の人々との経験知の交流について積極的に取り組みたい。さらに、3.この3年間の研究活動の内容「3.11以後の日本社会と自然災害」(仮題)のブックレットを作成し、研究のフィールドを提供してくださった被災地の人々へのフィードバックも含めて、研究成果を発信することを計画している。
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立教大学コミュニティ福祉学部紀要第17号
巻: 17号 ページ: 71-88
日本公民館学会 年報
巻: 11号 ページ: 6-15
巻: 11号 ページ: 16-22
立教大学コミュニティ福祉研究所紀要第2号
巻: 2号 ページ: 95-113