集団構成員間にある程度の繋がりのある空間を、社会的空間と定義づけ、そこでの軽微な環境行動実施をきっかけとして、環境意識及び他の環境行動への波及をもたらせないか検討した。具体的には、大学の同専攻同コースに属する約20名の学生が使用する、共用居室を利用し、そこでの消灯行動の啓蒙をポスターを用いて行った。実験前後の消灯状況をセンサーによって把握すると同時に、心理面での意識の変化を、実験前後のアンケート調査によって明らかにした。 その結果、明確な実行動や想定心理因子の変化は見られなかった。そこで、被験者の様々な社会的空間に対する態度について詳細に比較評価した。その結果、「演習室での消灯行動の無責任さ」と「演習室における互いの行動への意識」という2因子を抽出した。同因子得点を用いて、クラスタ分析により被験者を類型化した結果、「責任感はやや薄いが、周囲の目を気にしている」クラスタ①(n= 12)と、「責任感が薄く、周囲の目も気にしない」クラスタ②(n=6)、「責任感が強く、周囲の目はあまり気にしない」クラスタ③(n=9)に分けられた。 このうち、実際に消灯行動が変化したと答えたのはクラスタ①のみで、クラスタ②は行動に変化がなく、クラスタ③は元から必ず消していると答えた。このように、社会的空間での消灯行動における態度にはばらつきがあり、その特徴によりいくつかの類型に分かれることが判明した。これら各類型に対し、個別のアプローチにより、行動変容策を模索していくことが重要と言える。
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