研究課題
1.課題選定:環境行政の政策提言に果たす科学者の役割を、辺野古米軍基地環境影響評価(防衛省)、知床世界遺産科学委員会及びゼニガタアザラシ漁業被害対策*(環境省)、水産生物の希少性評価、資源管理のあり方検討会(水産庁)、国際事業としてUNESCO MAB計画(以下MAB)などの情報収集を行った。2. 事例研究:週1日雇用のPD及び協力者を得て、各事例の委員会の公開性を調査した。辺野古、水産生物は非公開、知床、ゼニガタアザラシ、FE科学委員会およびMABは公開性が高かった。3. メタ分析:アザラシは科学者が検討した試験捕獲を政権交代後に環境相が覆すという特異な事例となった。辺野古は基地埋め立て工事の是非を巡る世論と、工事の不手際が防衛省自身の指針を満たしているかどうかを巡る専門家の議論に分けられた。2014年3月5日に横浜国大主催の医療ICT(情報コミュニケーション技術)シンポジウムで松田がパネル登壇して、医療分野の専門家とレギュラトリ科学に関する取り組みの共通点と相違点を議論した。4. 社会的成果発信:知床はカメラマンによるクマの人なれ防止のため科学委員会が緊急声明を出すなど行政に代わり一定の役割を果たす事例となった。日本とペルーの漁業制度比較に関する学会発表は2013年12月10日付みなと新聞1面トップで紹介された。上記の諸事例を通じて、科学者の社会発信のスタイルを類型化し、整理した。我々が想定した科学者の「あるべき姿」としては、科学者の意見が委員個人に左右されずに学界共通のものであり、政策的な結論を自ら下さずに論点を整理すること、多様な関係者の論点を整理し、関係者の合意を促す見解を述べることなどがあげられる。けれども、科学者が必ずしもそのようなスタイルで発言していない場合、あるいは報道機関や市民組織などがそれ以外の役割を求めている場合などがあることがうかがえた。
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