オーストラリアのヴィクトリア州での調査を通じて、ランドケアの制度的特質と、それが持続的に機能するための条件について分析を行った。その結果、以下の知見が明らかとなった。第一に、オーストラリアのランドケアは、ローカルレベル、リージョナルレベル、州レベルの3つの階層に分かれて取り組みが展開されてきた。ローカルレベルでは環境改善の担い手として農家や市民が自律的に活動を展開しているのに対し、リージョナルレベルでは個々のランドケア・グループの間の連携を促進するためのランドケア・ネットワークが形成され、資金獲得や組織運営上のサポートを行っている。州レベルでは、各流域ごとの環境管理計画を策定し、ランドケア・グループやネットワークの活動に必要な資源を提供している。 第二に、ランドケア・グループがローカルレベルで形成されたプロセスを見ると、必ずコアとなる中心人物が存在し、メンバー間で保全対象や方法が明確に共有されていることが分かった。また、ランドケア・ネットワークがリージョナルレベルで形成される時の動機は、資金の獲得や管理を効率的に行うということにあった。 第三に、活動が活発で成功を収めているランドケア・グループやネットワークに共通する要素として、活動資金源の多様性が挙げられる。単一の資金源に依存するのではなく、政府や自治体の提供する補助金、企業からの寄付金、その他の競争的資金を獲得することによって、活動の自律性を担保している。 第四に、ランドケア活動の自律性を高めている要因として、ランドケア・ファシリテーター/コーディネーターの役割が挙げられる。ランドケア・ファシリテーター/コーディネーターはローカルのランドケア・グループの活動を促進するための助言や資源の提供を行うとともに、グループ間の横のつながりをつくり出し、ネットワークの形成を促進する役割を果たしている。
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