研究課題/領域番号 |
25560006
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩宮 眞一郎 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (60112356)
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研究分担者 |
金 基弘 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (90584665)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 音 / 映像 / 調和 / 同期 / 間 / デザイン / 音楽 / 感性 |
研究実績の概要 |
映像作品には,効果音や音楽など,作品を印象的にするための「音」が必ず付加されている。本研究の目的は,映像作品において,映像作品と調和し,制作者が意図する映像効果をもたらすための音のデザイン論を確立することである。 音と映像のアクセントの時間関係に基づく調和感(構造的調和)について,一連の印象評価実験に基づいて検討した。音と映像のアクセントが同期することが調和感をえる基本的な要因であるが,同期が乱れた場合においても,音あるいは映像のアクセントが規則的であると,ある程度の調和感が維持できることが示された。この場合,音のアクセントの規則性の方が映像のアクセントの同期よりも効果が大きい。音と映像のアクセントの規則性の効果は,アクセントが同期した視聴覚刺激を先行した場合にも,後続の刺激に対して影響する。この場合には,同時に呈示する条件とは異なり,映像のアクセントの規則性の方が影響が大きいとが示されている。 「笑い」を演出する映像にしばしば利用されるシンボリックな意味を生ずる音楽の最適な付加位置について検討し,笑いを生ずる出来事が発生した起点に対して,0.5~1秒程度間をおいて呈示したときに最も効果的な演出となることを示した。同様の検討を,台詞終わりの音楽を対象としても実施し,同様の傾向を得た。いずれの場合においても,映像の中で音楽を有効に活かすには,「間」が重要であることが示された。 映像空間上での物体の上昇とピッチの上昇の組み合わせのように,呈示する音高の変化音の方向とこの変化音と調和することが予想される映像の呈示方向が一致したときに調和感が得られることを示した。この傾向は,単一の変化音を呈示したときのみならず,両耳に逆方向に音高が変化する音を呈示した場合にも,認められた。 これらの知見は映像作品を制作する上で有効なもので,映像メディアにおける音響デザイン分野への適用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音と映像のアクセントの同期に基づく調和感を形成する心的過程,映像と音の変化と定位方向の調和に関する研究,映像コンテンツにおける「笑い」を誘発する音楽や種々の感情表現を行った台詞終わりの音楽の最適な付加位置などの課題に取り組むことができ,国際会議で3件,査読付きの学術論文2件,査読なしの学術論文1件,国内での学会発表6件のなどの研究成果を上げることができた。 研究代表者と分担者が所属する日本音響学会音のデザイン調査委員会は,2015年春季研究発表会において,スペシャルセッションとして「マルチモーダルな音のデザイン」を企画し,研究代表者と分担者が「映像作品を活かす音響デザイン手法」に関連する招待講演を行うととともに,3件の研究発表を行い,本研究の意義と成果をアピールした。 また,映像メディアにおける音のデザインの研究成果として,編集者としてコロナ社より「視聴覚融合の科学」を出版した。研究代表者の岩宮と分担者金は,この著書の「第3章 映像メディアにおける視聴覚融合」も担当した。
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今後の研究の推進方策 |
音と映像の調和感を形成する心的過程に関する研究,音と映像の調和感に生ずる文脈効果に関してはさらに深く検討を推し進め,成果を学会等で発表して行く予定である。 さらに,実際の映像作品における音と映像の関係の分析,映像コンテンツにおける「笑い」を誘発する効果音と音楽の効果的に使い方などの課題も推し進め,映像作品における音のデザイン論構築のために多角的に研究を実施する予定である。 最終年度も,学会発表,論文投稿を積極的に行い,本研究の成果の広報につとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
校費に余裕があり旅費に充当することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの研究の補足的な実験の実施とこれまでの研究の総括と分析を実施するための学術研究員を雇用する。
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