研究課題/領域番号 |
25560011
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
山田 真司 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 教授 (10200742)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 萌え / アニメーション / ゲーム / キャラクタ / デザイン / SD法 / 印象評定 |
研究概要 |
アニメ、テレビゲーム、マンガなどは、現在、重要な輸出産業・文化として位置づけられ、「クールジャパン」コンテンツと呼ばれている。これらにおいて「萌え」というキーワードは重要な位置を占めている。本研究は、従来、制作者達のセンスや経験、勘に基づいて制作されていた「萌えキャラクタ」の顔および声のデザインとその知覚印象との関係について、心理学的・工学的手法による実験研究で明らかにすることで、「萌えキャラ」のための科学的設計指針を得ることを目的とする。 本年度は、まずCG ソフトを用いて、プロのデザイナに「萌える」顔および「美人だが萌えない」顔を作成させた。次に、両目の間の距離、目の大きさ、口の位置、顔輪郭の縦横比などのパラメータを両者の間で内挿的、外挿的に変化させた顔を作成した。これらの83種類の刺激素材を用いて、SD 法を用いた印象評定実験を行い、因子分析を行った結果、これらのキャラクタの顔の印象は、「美しさ」、「派手さ」、「力強さ」、「大人っぽさ」の4因子で説明できることが分かった。また、美しくて、地味で、大人っぽい顔は美人と感じられ、美しくて、派手で、子供っぽい顔には「萌え」が感じられることが分かった。今後、様々な顔構成パラメータと印象との関係を精査していく予定である。 一方、「おにいちゃん」という言葉を12人の声優が100通りの言い方で発話したアーカイブを用い、その印象をSD法を用いた実験で明らかにしたところ、これらの発話の印象は「美しさ」と「活動性」の2因子で説明でき、「萌え」は「美しさ」と関係が非常に深いことが明らかになった。また、「萌え」の度合いは、発話のプロソディーには大きく依存せず、発話者によって大きく異なる様子が見られた。今後、基本周波数、スペクトル重心、発話時間などのパラメータとの関係を精査していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「萌えキャラクタ」の顔デザインに関しては、実験素材の作成、印象評定実験の実施、実験結果の分析と、予定していたプロセスは全て完了している。この成果については国内外の学会等で発表し、一定の評価を得ている。また、顔を構成する様々なパラメータと印象との関係に関する重回帰分析についてもすでに開始しており、この点は予定より進んでいると言える。一方、「萌える声」に関しては、「萌えない」声の収録が予定通り進んでいない。従って、印象評定実験も予定の進度には達していない。しかしながら、音声の基本周波数、スペクトル重心、発話時間などを独立に加工する方法を習熟し、実験の準備状況は良好である。また、一部これらの物理パラメータと印象との関係についてはすでに予備実験による検討を行っており、予定より進んでいる側面もある。以上を総合しておおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
顔を構成する様々なパラメータと知覚印象との関係について重回帰分析によって明らかにする。その後、重要なパラメータについて操作した顔を様々に作成し、これらを刺激として用いた、印象評定実験を行う。さらにこれらの結果から、複数のパラメータの間の交互効果についても明らかにする。 萌える声、萌えない声の平均基本周波数、基本周波数の変動幅、強さの変動幅、スペクトル重心の平均、スペクトル重心の変動幅、発話時間などの物理パラメータと、知覚印象との関係を明らかにする。その後、重要なパラメータについて操作した声を様々に作成し、これらを刺激として用いた印象評定実験を行う。更にこれらの結果から複数のパラメータの間の交互効果についても明らかにする。
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