日常睡眠に関する評価を行うために、自宅での睡眠の実測調査がどの程度有効かを中心に検討し、かつ、日常生活活動と睡眠の関係についても検討を行った。研究の最終期にあたる2015年度は,これまでのデータをもとに、若干の補足実測調査を含めて解析・考察を行った。 (1)簡易脳波センサー、体動センサーによる通常の日常睡眠の状況を把握する調査を行った。その結果、腰部に設置する体動センサーによる睡眠計測は、睡眠ー覚醒リズムを計測することができ、入眠時の検討も行えるが、若干中途覚醒判別が高くなる。脳波・眼球運動・頤筋筋電図が計測できる簡易脳波計センサーによる睡眠計測は、実験室でのPSG計測とほぼ同等程度、睡眠深度計測ができる。体動センサーと連携した計測をすることにより、中途覚醒等の精度が上がると考えられる。 (2)青年(大学生)の日常睡眠の計測による生活実態を行う事が出来た。短睡眠状況は、翌日の疲れ判定に影響をおよぼしており、午前より午後に居眠りが増加した。また、居眠り判定のため、押しボタン、ビデオ撮影、脳波による判定を比較した結果、脳波、押しボタン、ビデオ撮影の順で、居眠りを早く検出した。 (3)高齢者の日常睡眠における睡眠時間、睡眠様態等に関して、奈良および沖縄で調査を行ったが、暑熱環境下での睡眠に対する評価が悪く、不眠を訴えているものが多かった。夏期に奈良で行った簡易脳波計測による結果によれば、睡眠効率も青年群より低く、80%程度であった。 (4)青年(大学生)の実験室における睡眠実験により、夏期および冬期の温熱環境が睡眠に及ぼす影響は大きいと考えられ、特に寝具の影響が少ない夏期の暑熱環境は入眠が遅く、中途覚醒があり、深睡眠が睡眠前半に充分取れず影響が大きい。PSGによる睡眠判定とOSA睡眠調査票などによる主観申告との間には、高い相関関係が認められた。
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