社会との繋がりが希薄になりがちな高齢者が、様々なソーシャルメディアの共有を受けることで主に家族とのコミュニケーションを楽しむことを可能にする枠組み・インタフェースの提案・設計・実装を行い、その有効性の検証まで実施した。提案手法では、高齢者がソーシャルメディア利用を妨げる障壁の一つであるメディアへの到達や操作方法の難しさを、第三者からの支援を受ける枠組みとインタフェースの単純化、操作性の可視化・統一により解決した。同様にアンケートによって明らかにした障壁の一つであるコミュニケーション方式の違いによる不安やプライバシーの懸念を、メディアの種類によらず同じ仕組み/同じ方式でコミュニケーションを可能にする仕組みの導入により解決した。
有効性の検証としては、提案手法の操作性が高齢者にとって有効であることの検証と、提案手法によって実現されるメディア共有とそこから発生する家族とのコミュニケーションが高齢者にとって有効であることの実利用環境における検証を実施した。操作性の検証では、64歳以上の高齢者31名に対して提案手法を含む3種類のインタフェースを用いた複数タスクでの操作実験を実施した。単純な操作を実現した提案手法は通常の階層構造メニューと比較して探索効率が悪いにもかかわらず、操作対象のメニューの数によらず多くの被験者にとって扱いやすく、使用したいと感じるインタフェースであることを実証した。実利用環境による検証では、70歳以上の高齢者と20~30代の子か孫のペアの3組に対して2~3ヶ月の間実際に試用してもらい、アンケートとそこで発生したコミュニケーションの分析を行った。インターネット未経験者でもコンテンツやコミュニケーションを楽しむことが出来たなど一定の有効性が実証できた一方、タブレット本体の操作性や、初心者でない高齢者にとっての物足りなさ、実装された機能の不足などの課題が残った。
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