夜間照明は我々の生活を安全にした反面、健康リスクを高める可能性が指摘されている。国際ガン研究機構(IARC)はシフトワークを“おそらく発癌性がある(グループ2A)”に指定している。このメカニズムとして、夜間照明によるメラトニン分泌抑制が示唆されている。このような光による生体への作用は、古くから知られている桿体細胞や錐体細胞といった光受容器ではなく、メラノプシン含有神経節(mRGCs)という新たに発見された光受容器に由来するとされている。これまでの研究より、メラトニン分泌抑制は光の曝露強度や曝露時間、波長に依存することが明らかになってきた。しかし、mRGCsは古くから知られている光受容器とは光に対する時間応答特性が異なることが報告されている。つまり、同じ波長の光を同じ曝露量(光強度×時間)で曝露しても、短時間だけ発光する高速点滅光と一定に発光している光ではmRGCsに対して異なる作用をする可能性がある。しかし、このような光の時間的発光特性に着目した研究は非常に少なく、時間的発光特性の異なる光によるメラトニン分泌抑制作用は検討されていない。そこで、本課題では、異なる時間的発光特性の異なる光によるメラトニン分泌抑制作用を検討した。2年目である本年度は、初年度よりも光の強度を低く設定し、異なる点滅速度の光について検討した。その他の実験プロトコルは初年度と同様とした。本実験の結果、点滅速度が1000Hzという高速となる場合は、定常光と同程度のメラトニン分泌抑制作用を有することが示唆された。以上、本研究課題の結果より、点滅光は定常光よりもメラトニン分泌を抑制しにくいことが示されたものの、その点滅光の点滅速度が高速となる場合には定常光と同程度のメラトニン分泌抑制作用となることが示唆された。
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