現代社会での騒音トラブルは、単なる隣人間の軋轢に留まらず、騒音訴訟や殺傷事件にまで発展し、市民生活の破壊、人生の喪失をもたらす可能性のある重大な社会問題となっている。これらの発生防止、増加抑制のための社会的方策を講ずるには、基本的な検討分析情報として、騒音トラブルの発生から訴訟や事件に至る詳細な経緯が必要である。訴訟および事件の詳細は、裁判の過程における訴状や準備書面、証拠書類、判決書きなどを通して明らかにされるため、裁判所や所管の地方検察庁でこれら裁判資料の閲覧を行えば、その内容を把握することができる。この方法を用いて多くの騒音訴訟および騒音事件の調査を行い、その結果に基づき騒音トラブルの社会的な防止策、解決策の在り方を検討し、条例や社会制度などによる方策を検討した。 調査した事例は、騒音訴訟8件、騒音事件3件、その他近隣トラブル2件の計13件であり、それらのトラブル発生状況、当事者相互の対応、係争の経緯、決着の内容などの詳細を裁判資料を基に調べ上げ、その結果をA4版、234ページに亘る詳細事例集として纏め上げた。この書籍は、騒音トラブルに対する処理対応や受忍限度評価に関する参考資料、社会的な防止策立案時の資料、啓発パンフレットでの事例紹介や社会啓蒙の材料など、様々な面で騒音問題の防止・解決に役立ててもらうため、東京23区および都下全市、全政令指定都市や県庁所在市および県庁など、主な自治体の騒音担当部署に配布するとともに、一般市民も利用できるように、公共図書館、大学図書館をはじめ、各学会関係やマスコミ関係にも配布した。総計1000箇所への送付を行い、その反響も大きい。今後、この資料をもとに、トラブル解決のための社会的なシステム作りの具体的な動きが出てくることが大いに期待される。
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