研究課題/領域番号 |
25560029
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
花田 朋美 東京家政学院大学, 現代生活学部, 助教 (30408299)
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研究分担者 |
安藤 穣 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (50107158)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 収縮加工布 / 混合溶媒法 / 織密度 / 生分解性 / 強度低下 |
研究概要 |
布帛の収縮性に影響を与える因子の抽出については、ジクロロメタン/エタノール混合溶媒を用いて、テラマック原糸の収縮性について、既に知見が得られている布帛と同様の収縮実験を行った。その結果、同じ良溶媒モル分率では糸の収縮率が大きくなる傾向を示し、布帛の収縮には織構造の影響が反映されていることが示唆された。更に、原糸を用いて布帛を製織し、織密度20/cm、40/cm、80/cmの平織布について同様の収縮実験を行った結果、織密度の増大に伴い、収縮率が減少することが明らかとなった。従って、経糸と緯糸で構成されている空隙の存在と相互の糸の拘束状態が収縮に影響を与える因子の一つであるとの知見を得ることができた。 ポリ乳酸繊維における収縮加工の生分解性への効果については、既に収縮実験の知見が得られていた布帛の製造中止に伴い試料の入手が困難となったため、新たにテラマック原糸を使用した布帛の探索とその布帛の収縮特性の検証実験から開始せざるおえない状況となった。新たな布帛の収縮実験の結果、既知の布帛同様、良溶媒モル分率の増大に伴い収縮率が増大し、38モル%で最大収縮率を示したが、既知布帛に比べ、より繊維径が太く、織密度が高い新布帛においては、モル分率20~30%では収縮率が高い傾向を示し、最大収縮率は低い値となった。以上のことから、収縮率には繊維径(分子の配向性)が影響するという我々が既に考察している収縮のメカニズム、及び上記で得られた織密度が反映するという結果を更に裏付ける知見を得ることができた。 更に、土壌中での生分解性については、アルカリ性・酸性土壌の畑、学内の一般土壌、発酵肥料中(土着菌、乳酸菌、枯草菌)の各環境中に埋めた収縮加工布と未加工布の引張り強伸度と重量について、経時変化を測定した。その結果、アルカリ性・酸性土壌の畑に埋めた収縮加工布では、13週で強度低下を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポリ乳酸繊維における収縮加工の生分解性への効果については、既に収縮実験の知見が得られていた布帛の製造中止に伴い試料の入手が困難となったため、新たにテラマック原糸を使用した布帛の探索とその布帛の収縮特性の検証実験から開始せざるおえない状況となり、各環境中に試料を埋める時期が当初の計画より遅くなってしまった。 収縮性のテキスタイル制作への適用性の検討については、「布帛の収縮性に影響を与える因子の抽出」の結果を反映させ、製織方法を検討してテキスタイル制作を行う予定であったが、非常に細く透明な26 dtex f1 t0のテラマック原糸の取り扱いが予想以上に困難であったため、テキスタイル作品の制作まで及ばなかった。 更に、平成25年度は地域連携活動等の業務が重なったため、エフォートが申請値よりかなり低くなってしまったことも、研究の遅れの一因として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
ポリ乳酸繊維における収縮加工の生分解性への効果については、平成25年度と同様にジクロロメタン/エタノール混合溶媒を使用して収縮処理した収縮加工布と未加工布を用いて、更に長期に渡り、引張り強伸度と重量の経時変化の観測を実施する。土壌環境については、学内の一般土壌(酸性)と高密度に微生物が生息している高密度微生物培養土、及びコンポスト中の3点に絞り検討することとする。その過程において、変化の顕著な時点をいくつか抽出して分子量の測定等を行い、ジクロロメタン/エタノール混合溶媒系での生分解性への効果の全体像を考察する。従って、当初計画していた良貧溶媒種を変化させて収縮処理した試料での実験は、今後の課題として将来的に検討することとする。 布帛の収縮性に影響を与える因子の抽出についても、良貧溶媒種を変化させた実験は、今後の課題とし、平成26年度においては、ジクロロメタン/エタノール混合溶媒系での検討に留め、織密度、織組織を変化させた試料を製織して、織構造の影響について考察することとする。 また、極細繊維に対する立体模様付与の可能性の検討については、ナイロンを中心とした極細繊維布帛への混合溶媒法の応用を検討し、収縮に及ぼす繊維径の影響に関する新たな知見を得ることにより、更に収縮のメカニズムについて考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験の遅れに伴い、分子量測定等に適した試料が整わなかったため、試験の実施を平成26年度に見送ることとした。従って、その経費の残額が生じた。 平成25年度未使用分は、平成26年度に繰越し、分子量測定等の学外試験の経費に充当する予定である。
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