食感を客観的に評価するためには,官能評価に対応する食物咀嚼時の物理的な特性が必要である.この観点からスナック菓子の材料力学的および構造力学的観点に注目して研究を行った.まず平成25年度は、材料力学的観点からスナック菓子を構成する生地のミクロレベルでのまのめヤング率および材料強度を小型微小計測装置を開発して測定した。その結果、従来マクロレベルで計測されているテクスチャー試験機の値よりも5~700倍大きいことが示された。 次に平成26年度では、食感を数理モデルで表現するためにいくつかの構造力学的特徴量で食感を表現することを試みた.日本語には,擬音語が豊富であり,食物咀嚼時の音を忠実に表現する言葉が多数使用されている.そこで,スナック菓子の咀嚼音の言葉として,「さくさく」,「かりかり」,「ぱりぱり」,「がりがり」の言葉と構造的特徴量の関係について調査した.これまでの筆者らの研究では,棒状のスナック菓子に着目して調査したが,かりかり感やぱりぱり感と深く関連する特徴量を見いだせなかった.その理由はこれまでの数理モデルでは,菓子の太さや生地の充填率などの菓子全体をおおまかに見た指標しか用いられておらず,菓子内部の微細構造の幾何的特徴に注目した情報が含まれていないためである. そこで本研究では,菓子内部の微細構造の幾何的特徴(厚さ,幅)に注目し,新たな特徴量を導入した.統計分析的手法を用いて数理モデルの係数を求めたところ,従来モデルよりも食感をうまく表せることを示した. 平成26年度はバイオメカニクス的観点から食物の性状による顎運動についても調査した。筆者らが開発した顎運動表示システムにおいて画像性能を向上させ、歯列の接触状態を解析した。その結果、食物の種類によって顎運動軌跡および歯列の接触状態に違いが現れることを初めて示した。
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