研究課題/領域番号 |
25560034
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
山野 春子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 助教 (90242338)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食品機能性成分 / 癌 / 初代培養細胞 / 血管新生抑制 / VEGF |
研究概要 |
食品中には抗変異原性作用や抗酸化作用など、様々な機能が存在することに着目し、本研究では血管新生抑制作用の新しい評価法を開発し、その評価法を用いて色々な食品中に存在する血管新生抑制作用の探索と評価を行うことを目的とした。 新しい評価法として、これまで血管内皮の研究用として一般的に使用されてきた、ヒト臍帯静脈内皮細胞やウシ大動脈内皮細胞に代わる内皮細胞の初代培養細胞を作成し、血管新生抑制作用の探索と評価に用いることとした。 作成する内皮細胞は、一般的に使用されてきた内皮細胞に比べ、血管新生抑制作用の研究において最も重要な因子である VEGF(Vascular endothelial growth factor)に強い反応性を示し、かつ、培養液中の血清など VEGF 以外の増殖因子に非特異的に応答しない性質を持つものであることが望まれる。 ラット肝由来の特定の内皮細胞がこの性質を満たすと考えられるため、平成25年度は、この内皮細胞の初代培養細胞を作成する方法を検討した。雄のSDラットを用い、肝臓門脈にカニューレを挿入し、38℃に保温した前灌流液を流した後脱血し、次いでコラゲナーゼを含む灌流液で肝臓を灌流した。灌流後の肝臓組織を、前灌流液およびコラゲナーゼを含む灌流液の入った容器に採取し、組織を分散させた後数回遠心分離を行い、目的とする内皮細胞を分離した。得られた内皮細胞をコラーゲン処理したプレートで培養し、初代培養細胞を調製した。この細胞を顕微鏡下で観察した結果、その特徴的な形態から、目的とする内皮細胞の初代培養細胞が作成できたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
色々な食品中に存在する血管新生抑制作用の新しい評価法に用いるために、これまで血管内皮の研究に一般的に使われてきた内皮細胞に代わる新しい内皮細胞を作成することを目指し、灌流したラット肝臓から採取した特定の内皮細胞をコラーゲン処理したプレートで培養し、顕微鏡下で観察した結果、その特徴的な形態から目的とする内皮細胞の初代培養細胞が作成されたことを確認した。しかし、平成25年度交付申請により購入した自動細胞計数装置を用いて、作成した初代培養細胞の細胞数を計測したところ、食品中の血管新生抑制作用の探索や評価に使用するに十分な細胞数が得られておらず、当初の実施計画であった血管新生抑制作用の探索や評価に着手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に引き続き、色々な食品中に存在する機能性のひとつである血管新生抑制作用を、新しく開発する評価法を用いて探索、評価する。平成25年度に、灌流したラット肝臓から調製した内皮細胞が、特徴的な形態から目的とする新しい内皮細胞の初代培養細胞であることは確認できたが、食品中の血管新生抑制作用の探索や評価に用いるに十分な細胞数を得られなかったことから、今後は、作成する初代培養細胞の細胞数が十分に得られるような調製法の検討を行う。 検討すべき点としては、先ず初代培養細胞の培養液および培養プレートが考えられる。これらの点について、培養液の組成条件やプレートのコラーゲン処理法の改良を行い、新しい内皮細胞の初代培養細胞の調製法を確立する。 十分な細胞数が得られる調製法を確立した後、この内皮細胞とこれまで血管内皮の研究に一般的に使用されてきた内皮細胞に VEGF(Vascular endothelial growth factor)を添加し、VEGF に対する特異的な応答性の違いを比較する。さらに当初の実施計画に従って、抗変異原性作用や制癌作用が報告されている食品成分を中心に、色々な食品について、新しく作成した内皮細胞の初代培養細胞を用いて、血管新生抑制作用の探索と評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、血管内皮の研究に一般的に使用されている市販の内皮細胞に比べ、VEGF に対する特異的な応答性が高い内皮細胞の調製法を確立し、それを用いて色々な食品中に存在する血管新生抑制作用の探索と評価を行うことを計画したが、VEGF に対する応答性の違いを調べるために必要となる市販の内皮細胞および VEGFは高額である。一方、当初申請額に対し交付額が減額されているため、これらの高額な試薬は、新しい内皮細胞の初代培養細胞の調製法が十分に確立できる次年度に購入することとした。また、実験補助および資料整理のため依頼する計画であった研究協力者1名の謝金として計上した額は、研究代表者がすべて実施したため、使用せずに次年度使用額とした。 平成25年度の当初実施計画で十分に達成できなかった新しい内皮細胞の初代培養細胞の調製法の確立のために、次年度も引き続き調製法の改良、検討を行う。確立した調製法に従って初代培養細胞を作成し、これを用いて次年度の当初計画に沿って、食品中の血管新生抑制作用の探索と評価を行う。この実験計画を遂行するに要する試薬、器具、実験用ラット、市販の細胞などの消耗品費、資料収集・研究成果発表のための旅費、研究成果投稿料に、次年度使用額と翌年度分助成金を合わせて使用する計画である。
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