各種条件でのカゼインの凝固状態(チーズカード)の力学物性を把握することで、物性発現のメカニズムの解明及びコントロールを目的としている。平成26年度までの知見で、カード中のpHを変化させることで貯蔵弾性率と損失弾性率に温度依存的な特徴を把握した。さらに、乳中の脂肪の存在の影響を把握するために、脱脂乳とクリーム添加(脂肪を増やす)を出発原料としてチーズカードを調製し、力学物性を把握した。平成27年度は、さらに平均脂肪球径が異なる(均質の有無)原料乳からチーズカードを調製し、力学物性(温度分散)を測定した。脂肪球径の違いにより、特に20℃以下の力学物性に違いがみられた。 脂肪球径が小さい方が貯蔵弾性率、損失弾性率ともに大きな値を取るが、tanδに 特徴的なピーク(もしくは平坦)部分が観察された。脂肪球径が小さくなることで、単に弾性率が大きくなるのではなく、損失弾性率の寄与がより大きくなることが分かった。 新規な凝乳機構を持つ「きのこ由来の酵素」を用い、各種凝乳状態を把握した。従来の酵素では超高温殺菌牛乳では凝固しないが、本酵素では凝乳が観察された。 脱脂乳を限外濾過で濃縮し冷却すると、カゼインのゲル化挙動が観察される。このようにして得られた、カゼインを主成分とする乳たんぱく質濃縮物の性状及び力学特性(動的粘弾性(温度分散、周波数分散、歪み分散))を明らかにした。温度分散によりゾルーゲル転移点が確認でき熱可逆性を有するゲルであった。10℃以上で周波数分散の温度-時間換算ができ、歪み分散も温度帯によって線形領域の限界点が異なった。特に歪み分散の損失弾性率は粒子分散系に見られる特徴的なピークが観察された。サンプルを希釈するとゾル-ゲル転移の温度が低下することや歪み分散でもより小さい歪みでゲルが壊れることなどからカゼインの濃度によって結合力に差があることがわかった。
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