研究実績の概要 |
疎水性アミノ酸のうちロイシン,イソロイシン,バリンは分岐鎖アミノ酸(BCAA: Branched-chain amino acid)と呼ばれ,特にエネルギー代謝や細胞増殖,翻訳・転写活性を促進する効果がある.ダイズの子実,植物体におけるBCAA含量を増加することで食品の機能性栄養強化,飼料の畜肉生産効率増大が期待される.分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素(BCAT:Branched-chain amino acid aminotransferase) はBCAA合成と分解の両方の活性を触媒している.子実肥大期のダイズ子実の分岐鎖アミノ酸含量の変動と,ダイズのBCAT遺伝子の探索および発現レベルの解析を行った.BCAA含量は,子実肥大開始直後に増加し,その後7日目を境に減少に転じた.Totalアミノ酸含量としてはいずれの処理区でも全てのステージでロイシンが最も多く,各処理区において子実肥大に伴いバリン,ロイシン,イソロイシンの全アミノ酸含量は増加し,遊離アミノ酸含量は減少傾向にあった.発現レベルの比較的高いGmBCAT2,3,4について発現プロファイルを調べた. GmBCAT3は子実肥大初期に最も発現が高く,次第に低くなった.一方,残りのGmBCATは子実肥大開始0日目では弱く発現し,その後子実肥大中期に最も発現レベルが上昇した後,再び低下した.胚軸に対するショ糖飢餓処理によりGmBCAT3の発現が顕著に増加した.ダイズ子実のBCAA含量調節において子実肥大に伴って異なるBCAT遺伝子が機能すると共に,ソースからシンクへの栄養転流量がBCATの発現レベルの調節に重要な働きをしている可能性が示唆された.
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