研究課題/領域番号 |
25560039
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
中村 考志 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (90285247)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダイコン / 生体内利用能 / 京野菜 / MTBITC / 癌 |
研究概要 |
世界消費量の90%を日本が占めているダイコンは和食の主要な野菜のひとつであり,ダイコンをおろすことは日本国外では見られない特異な調理法である.ダイコンをおろすと辛味成分である4-methylthio-3-butenyl isothiocyanate(MTBITC)が生成し,MTBITCを経口摂取した哺乳動物では膵臓がんと食道がんの抑制効果を示す.また疫学調査ではダイコンの摂取は食道がんのリスクを低下させる因子であることが明らかとなっている.ダイコンの機能性を効果的に得る方法を考案する上でMTBITCのヒト生体内利用能の差や変動を把握しておくことは意義があり,MTBITCのヒト生体内利用能の動態解析を目的とした高精度分析方法の確立と,ダイコン摂取後のヒトのMTBITC生体内利用能の個人差と時間変動について検討した.MTBITCのヒト生体内利用能はMTBITC摂取後の尿中4-methylthio-3-butenyl dithiocarbamate(MTBDTC)量を指標としてODSカラムを用いた逆相HPLC分析により測定した.従来の分析法の問題点であった尿中夾雑物による最大15%の誤差を排除した高精度分析法を確立するために,HPLC分析条件の再検討,MTBDTCの精製法・ラベル化法の適用をおこなった.その結果,イオン交換基を導入したODSカラムを用いることで尿中夾雑物による測定誤差を排除することができ,MTBITCの生体内利用能の高精度分析法を確立することができた.この高精度分析法を用いてMTBITCの生体内利用能を被験者2名により10回測定したところ,平均値は男性被験者が12.8%,女性被験者が11.5%であった.このことから2名間の個人差は少ないと考えられたが,摂取したMTBITCの一部のみしか生体に利用されていないことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備試験的にはMTBITCの生体内利用能は男性被験者の場合は0-90%の間で約3か月周期の三角波形状をとる大きな変動が観察され,女性被験者の場合は8-38%の間で振幅する小さな変動が観察された.この変動の差は個人差か性差によるものであるのかは多数の被験者のデータが蓄積するまで不明であるが,本試験系によりこのようなMTBITCのヒト生体内利用能の個人差や時間変動を把握できる可能性が示された.この点で当初予想していたMTBITCの生体内利用能に個人差がある結果が得られつつあり順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
MTBITCのヒト生体内利用能の動態解析の検討には,男女3名ずつを被験者として3日間ダイコン摂取を禁止した後に100 gのダイコンおろしを摂取して24時間蓄尿し,MTBITC摂取量に対する尿中MTBDTCの排泄率をMTBITCの生体内利用能として求める.これを隔週で1年間測定し,MTBITCの生体内利用能の個人差(平均値)と時間変動(変動の周期性)について解析する.
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトを対象とした試験に使用する物品費の支出額が当初予定していた額より少額であったために当該助成金が生じた. 当該助成金の額は26年度に必要な物品費に充てる予定である.
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