研究実績の概要 |
秋田の伝統的食用油であるアケビ油は1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート(DAGA)を主成分とし、体脂肪がつきにくく肥満予防に有効であるが、原材料の確保が困難で大量製造による実用化が困難な状況である。本研究では、アケビ油の特性を活かした大量製造可能な新規健康志向型食用油の開発を目的として研究を行った。新規油脂の開発については、酵素法及化学合成法の2つを検討した。 搾油可能な成熟したアケビ種子にはDAGA合成酵素は検出されなかったが、成長段階の種子には同酵素活性が検出されたことから、cDNAライブラリーを作成しDAGA合成酵素であるジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(DGAT)遺伝子のクローニングに成功した。その塩基配列は通常の植物種子の主要油脂であるトリアシルグリセロールを合成するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼと相同性が高かった。DGAT遺伝子を大腸菌に発現させた結果、ミクロソーム画分に酵素活性が検出され、これを酵素源としてDAGAを合成することに成功した。 また、ピリジン-無水酢酸法で大量に化学合成したDAGAを使用して、有効性及び安全性を検証した。合成DAGAも特に有害な作用はなく、天然のアケビ油と同様に体脂肪がつきにくく肥満予防に有効な特性を示すことを明らかにした。現段階では、化学合成油脂は食用として利用できないが、酵素法と組み合わせて、食用として利用可能な新規健康志向型食用油の開発を進めていく計画である。
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