研究課題/領域番号 |
25560048
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
茶山 和敏 静岡大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30260582)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | CCL25 / CCR9 / 乳汁 / 新生児腸管 / 腸管免疫 / 初乳 / 常乳 / IgA産生細胞 |
研究概要 |
平成25年度は、以下の3項目について検討を行い、マウスの妊娠および哺乳期間のCCL25の乳腺組織および乳汁中への分泌量の経時的変化と乳仔の腸管内のCCL25およびCCR9の発現に関する結果を得た。 (1)妊娠および出産後の母親マウスの乳腺組織内でのCCL25発現を妊娠前、妊娠中及び出産後にかけて経時的に調べた結果、CCL25の乳腺内発現は、妊娠開始から出産直前にかけて増加し、出産直前・直後がそのピークとなり、哺乳中も継続することが確認された。しかしながら、IgA量が多い初乳産生時期のIgA産生細胞数は出産直前・直後で増えなかったことから、出産直前からのCCL25発現は初乳中のIgA産生細胞の誘引作用ではなく、乳汁への分泌によることが判明した。 (2)マウスの初乳および哺乳2、5、10日目の乳汁を採取して、各採取時期の乳汁中のCCL25の有無と含有量をウエスタンブロッティング(WB)法によって調べた。その結果、乳汁中のCCL25の産生量は初乳に最も多く、常乳にも哺乳期間を通して存在していることが確認された。 (3)出産直前および哺乳2、5、10、および21日目のマウス新生児の腸管を採取して、腸管内のCCL25産生およびIgA産生細胞の存在を蛍光免疫染色法によって調べた。その結果、哺乳10日までの小腸の腸絨毛の上皮細胞にもCCL25の発現がみられるが、哺乳21日目に比べてその発現量は非常に少なかった。また、IgA産生細胞の発現は哺乳21日目ではみられたが、10日目以前にはほとんど見られなかった。また、CCL25のレセプターであるCCR9の腸管内でのmRNA発現は、哺乳10日目以降に上昇していることが確認された。そのため、乳汁中のCCL25が哺乳10日目以降のIgA産生細胞の誘引に関係している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の研究計画としては、マウスの哺乳期間のCCL25の乳汁中への分泌量の経時的変化と乳仔の腸管内のCCL25およびCCR9の発現を調べることを目的として、以下の研究を計画していた。 (1) マウスの初乳および哺乳2、5、10日目の乳汁を採取し、各採取時期の乳汁中のCCL25の有無と含有量をウエスタンブロッティング(WB)法によって確認する。また、各時期の乳仔腸管内のCCL25およびCCR9の有無と含有量を同様に解析する。腸管内のCCL25およびCCR9の発現については免疫蛍光抗体法を用いて蛍光実体顕微鏡で腸管上皮における発現部位およびその発現量についても確認する。 (2)また、同時期のマウス乳仔の腸管(小腸および大腸)を摘出各時期の乳仔腸管のmRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法あるいは免疫蛍光染色法によってCCL25およびCCR9のタンパクあるいは遺伝子発現を分析・比較する。 そして、上記の計画に沿って平成25年度に実験を行い、研究実績で記述したように、多くの成果を上げることができた。また、妊娠時の母マウス乳腺組織内でのCCL25の発現についても詳細な検討を行い、当初の計画以上の結果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、乳児の腸管免疫機能向上を目指したCCL25添加乳汁の投与によるマウス乳仔の腸管内リンパ球誘引およびIgA産生、腸管内免疫小器官の形成に対する効果の詳細な検討を目的として、以下の3点について検討を行う。 (1)マウス乳仔用人工乳にCCL25を種々の濃度で添加し、CCL25添加乳を乳仔に経口投与する。その後、乳仔の腸管を摘出して、CCR9の発現を遺伝子レベルおよび免疫蛍光抗体法によって分析・比較する。 (2)マウス乳仔用人工乳にCCL25を種々の濃度で添加し、CCL25添加乳を哺乳10日目以降の乳仔に経口投与する。その後、乳仔の腸管を摘出して、IgA分泌細胞あるいはその他の免疫細胞の集積を免疫蛍光抗体法によって分析・比較する。 (3)マウス乳仔用人工乳にCCL25を種々の濃度で添加し、CCL25添加乳を乳仔に経口投与する。その後、乳仔の腸管を摘出して、投与後の腸管内のパイエル板、クリプトパッチの形成を解析・比較する。 また、アメリカのジャクソン研究所にCCL25ノックアウトマウスが保存されていることが分かったことから、同マウスを分与してもらい、CCL25ノックアウトマウスを用いて上記と同様の実験を行い、CCL25の新生児腸管での機能性をより詳細に検討する。
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