研究課題/領域番号 |
25560050
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
松田 覚 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (50242110)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 遺伝子発現 / 食物成分 / 機能性食品 |
研究実績の概要 |
細胞における遺伝子発現に影響を与えうる刺激要因の同定とAKTやp38MAPKの下流で誘導されるmRNAの発現調節に関する研究を行った。この学術背景として、香辛料の適度の摂取が安全な食欲増進効果をもたらし健康への良好な結果を得てきたことが知られており、食要因で調節することが可能な腸管免疫の働きが腸内細菌叢を介して免疫状態にも影響するためである。種々の食成分によってAKTやp38MAPKの活性化がどのように変化するのかを、ラットの骨髄初代培養系や培養細胞系において検討している。RANKLやTNFなどのサイトカイン産生との関わりを解析した。食成分による遺伝子発現調節結果を踏まえて、疾患などの予防に食事のデザインを、例えば生活習慣病関連遺伝子のSNPs解析結果や本研究成果を踏まえて検討した。RNA干渉を分子機能解析に応用し、AKTやp38MAPKなどの遺伝子発現においても同様に解析を進めた。また、種々のスパイスやハーブ、そして植物ポリフェノール類の刺激やカプサイシンなどによってAKTを含む細胞内シグナル伝達系がどのように変化するのかを検討した。そして、誘導される遺伝子産物をウエスタンブロッティングや蛍光組織染色そしてin situハイブリダイズを用いて解析し、生活習慣病との関わりを追及した。遺伝子発現系にこれら分子を介した影響を与えうる食事成分があることを明らかにした。また、がん遺伝子やがん抑制遺伝子発現の増減にも影響していることを見出した。本研究成果を踏まえて関連する疾患の効果的な食事のデザインを考案した。そして、種々の疾患の治療や予防へと結びつける示唆と考察を総説論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果としてこれまでに査読付き英語論文を3報学術雑誌に発表しており、研究計画を基本として発展的な実験などもおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
AKTやp38MAPKは代表的なセリン・スレオニンキナーゼである。ここまでの研究結果をin vivo で検証する目的で、マウスやラットなどのモデル疾患動物におけるリンパ細胞を、AKTやp38MAPKが関係するカベオラ構造の観点からも検討する。検証にRNA干渉を用いる。カベオリンや新規カベオリン結合蛋白質に対する特異抗体やcDNA を用いて、ウエスタンブロッティングや蛍光組織染色そしてin situハイブリダイズを行い、疾患動物と正常動物とを比較検討する。そしてそれぞれの分子のリン酸化動態を解析する。血中のサイトカイン量の解析や食餌成分との関連を、誘導させたRNA干渉との相関関係の観点から検討する。さらに、内分泌系の異常などによる生活習慣病モデル疾患動物を用いて同様の解析を加えつつ、生活習慣病モデル疾患動物へ有効性であることを検証する。疾患動物で特異的に誘導されているmiRNAとの相関関係の点からも検討する。転写因子のリガンド刺激(抑制)によって核内で起動する遺伝子調節系を利用した解析も行う。これによって効果的な食要因の構築を試みる。マウス実験系でin vivo におけるターゲット蛋白質の機能調節から適切な投与法を含めて検討する。実験動物などで食餌性に摂取させることで、標的遺伝子発現が可能であることを確認する。
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