研究課題/領域番号 |
25560058
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
閔 俊哲 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (10453060)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒト爪 / 癌 / 早期診断 / 非侵襲的 |
研究概要 |
病態が潜在的に進行するがんでは、発症前での早期発見が疾病の進行抑制や治療において重要な鍵となる。ヒトの爪は、臨床検査で汎用されている血液や尿に比べ、構造上の特徴から、数ヶ月以上の長期にわたる体内の栄養状態や過去の元素暴露量、薬物使用歴が残されている。そこで、本年度ではヒト爪に微量に存在するポリアミン及びアセチルポリアミン9種類の一斉分離分析と2種類のジアセチルポリアミンの高感度定量方法の開発を試みた。DBD-Fと誘導体化することで9種類のポリアミンは20分以内、2種類のジアセチルポリアミンは3分以内に良好に分離検出することができた。また、健常人39名、肺癌患者17名のヒト爪試料に適用したところ、健常人と肺癌患者の爪からDAP、N1-actPUT、N1-actSPMをはじめとする9種類のポリアミ全てを検出することができた。さらに、健常人と肺癌患者の爪を用い定量値を求め、比較検討を行った結果、健常人の男女間ではPUT、N1-actPUTの2つのポリアミンでは男性の方の含量が高く、有意差 (p < 0.01) を示した。また、肺癌患者と健常人の定量値を比較したところ、DAP等の7種類のポリアミンの含量はほぼ同等に検出されたが、SPMでは肺癌患者の方が健常人より含量が高く有意差 (p < 0.05) が認められた。さらに、ジアセチルポリアミンの分析においては、健常者と肺癌間者の爪から初めてDiAct-Spd、DiAct-Spmを検出することができた。定量値を比較した結果、若年男性において、DiAct-Spmの含量が女性に比べて多い傾向が見られ、40-80歳代の肺癌患者と健常者の平均値で比較した際、肺癌患者において、DiAct-Spdの増加傾向が示された。以上の結果より、ヒト爪中のポリアミンの測定は肺癌の早期診断への可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、ヒト爪に微量に存在するポリアミン及びアセチルポリアミン9種類の一斉分離分析と2種類のジアセチルポリアミンの高感度定量方法の開発に成功し、さらに健常人と肺癌患者爪中ポリアミンとジアセチルポリアミンの定量値を求め、有意差解析も実施することがでた。以上のことから研究は概ね順調に進展していると判断した。今後、新たな低分子バイオマーカー代謝物の発掘や、他の種類の癌診断における爪の有用性を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
複数D, L-光学異性体遊離低分子代謝物を標的とし、高感度検出可能なLC-MS一斉分析法の開発を試み、肺がん、大腸がん患者爪を分析し、新規バイオマーカーとしての有用性を評価し、新規臨床生体試料としてのヒト爪の有用性を検討する。
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