研究実績の概要 |
ヒト爪を用い、癌の早期診断技術の開発を目的として、増加の一方を辿っている大腸癌に着目し、光学異性体を含む新規バイオマーカー候補物の同時高感度分析法の開発を試みた。大腸癌は、早期発見による生存率が極めて高く、発症前の早期発見及びその診断法が強く求められている。近年ヒト血中メタボローム解析から大腸癌に早期反応を示す新規バイオマーカー候補物として2-Hydroxy butyrate (HB)、Aspartic acid (Asp)、Kynurenine (Kyn)、Cystamine (Cys)が発見されその有用性が示唆された。しかし、これらの新規バイオマーカー候補物はキラル中心を持つ化合物もあるが、その光学異性体の有用性についてはまだ不明であった。そこで我々は、これらのキラル中心を持つ新規バイオマーカー候補物に着目し、高感度誘導体化試薬として(R), (S)-DBD-Pro-COClを用い、LC-ESI-MS/MSで一斉分析法の開発を行ったところ、3種類の光学異性体を含む7種類の新規バイオマーカー候補物を20分以内に良好な分離を達成することができた。また、健常者、大腸癌患者の爪に適用したところ、HB、Asp、Cysを初めて検出することができた。さらに、健常者と大腸癌患者の爪を用い定量値を比較した結果、HB、Aspにおいて、大腸癌患者は健常者より約4.2-9.5倍高い定量値が示され、大腸癌患者の増加傾向が示唆された。さらに、全体のピーク面積に対するD-体の割合のD/D+L比を比較した結果、大腸癌患者の値の方が健常者よりも高いことが示唆され、ヒト爪中のHB 、L-Asp候補物は大腸癌の早期診断への可能性が示唆された。
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