研究課題/領域番号 |
25560061
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
小浜 智子 武蔵野大学, 薬学研究所, 客員研究員 (00364703)
|
研究分担者 |
村上 孝 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (00326852)
河原田 律子 (那須 律子) 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 助教 (60383147)
大室 弘美 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (00124470)
小浜 一弘 武蔵野大学, 薬学研究所, 客員教授 (30101116)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 糖尿病 / がん |
研究概要 |
Streptozotocin による糖尿病マウスに移植可能な乳癌を接種し、糖尿病合併乳がんマウスモデルを作製し検討を行った。Glucose濃度の違いにより4T1乳がん細胞の増殖が72時間以上になると増加することが分かった。また、糖尿病状態では、乳がんの進展が促進された。そこで、当該モデルにn-3 系不飽和脂肪酸を豊富に含むエイコサペンタエン酸(EPA)を摂取させ、がん進展と転移動態を試験したところ、がんの増殖を抑制する可能性が示唆された。 1.糖尿病合併乳がんマウスを作製し、腫瘍増大の解析 BALB/c マウスにstreptozotocin (200mg/kg)を腹腔内接種し糖尿病マウスを作製後、エイコサペンタエン酸投与群と生食投与群の2群で実験を行った。BALB/c マウスに由来する大腸癌細胞株Colon26(5X 105 個)を皮下に接種し、腫瘍径を計測することにより腫瘍サイズを経時的に計測し、生存率を検定した。がんの種類(発生母地)による応答性の違いが存在する可能性から、同じBALB/c マウスに由来する乳癌細胞株4T1を用いて同様の試験を実施した結果、糖尿病では乳がんの進展が促進した。 2.糖尿病合併乳がんマウスにおけるがん転移促進の解析前述と同様に糖尿病化したLB/c マウスと食餌下で、血行性転移能についての試験を行った。この際、移植するがん細胞株はpMSCV-luciferase レトロウイルスによりホタル由来luciferaseを安定的に発現するマウスの尾静脈から接種し、全身における転移状態を計測するがん細胞に由来するluciferase の発光を指標に定量的に解析した。肺においては、糖尿病で転移する率が低下した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Streptozotocin による糖尿病マウスに癌を接種したモデルマウスの作成が難しかったため、実験が遅れた。モデルマウス作成後は、糖尿病合併乳癌マウスにおけるがん転移促進の解析を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
糖尿病合併乳がんマウスにおける腫瘍進展とn-3系不飽和脂肪酸を含むEPA投与によるがん進展への影響に焦点を絞り解析を進める。これまでn-3系不飽和脂肪酸を多く含む魚油を健常マウスが摂取するとNK細胞の数と活性化が低下することが報告されている。このことから、糖尿病状態並びに糖尿病合併乳がん状態では、さらにNK細胞の減少と活性低下が予想される。 糖尿病合併乳がんマウスから脾臓を取り出し、1)CD3-DX5+NK細胞数をflow cytometer(FACS解析)により計測し、2)YAC-1細胞を標的としたNK細胞依存的な傷害活性を求める。これらにおいて有意な結果が得られた場合、当該乳がん動物モデルにおいて、NK細胞の寄与を確かめるため、活性に重要なNKG2D分子の関与、抗asialo-GM1抗体投与によるNK細胞の除去実験等を実施する。 さらに、前年度の結果から、関連するシグナル伝達経路を構成するたんぱく質のリン酸化状態の分析を進める。特に、前述のp53 とがん細胞の代謝は重要な経路であるためAKT経路とp53経路との接点となる中核分子を見極め、摂取脂肪酸に選択的な活性化シグナルを同定する。特に、これまで報告されているn-3 系不飽和脂肪酸ががん細胞に与える影響のうち、1) アポトーシス誘導と細胞周期停止、 2)細胞膜構造の変化とシグナル伝達の局在化について、細胞生物学的解析を実施する。また生体から取り出した腫瘍について、解糖系・ペントースリン酸回路、TCA 回路、核酸類などエネルギー代謝に特化したメタボローム解析を実施したい(ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社への委託解析を予定)。この試験により摂取脂肪酸による活性化シグナルと腫瘍部位における基本的なエネルギー代謝経路の変更の全貌が明らかになることが期待できる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
糖尿病合併乳がんマウスの作成が予想以上に困難であったため、平成25年度に行う予定であった糖尿病合併乳癌マウスにおける腫瘍進展機構の解析を終了することが出来なかった。そのため、この解析に使用する費用が残ったため、次年度に繰り越して実験消耗品費として使用したい。 平成25年度に行う予定であった糖尿病合併乳がんマウスにおける腫瘍進展機構の解析を行う。糖尿病化したBALB/c マウスと食餌下進展した腫瘍組織を摘出し、AKT-mTOR 経路におけるタンパク質リン酸化を免疫組織化学染色法並びにWestern blotting により評価する。本研究計画の着想に至った経過から対照となるシグナル伝達経路としてERK1/2 リン酸化について検定する。p53 との関連性の試験には、siRNA を用いたp53 knockdown 細胞作製により腫瘍進展を評価する。同様の条件を細胞培養に適用し、in vitro での評価実験を行う。
|