研究課題/領域番号 |
25560062
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
井戸田 陽子 高崎健康福祉大学, 薬学部, 研究員 (90629594)
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研究分担者 |
矢野 健太郎 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助手 (40644290)
荻原 琢男 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (80448886)
張 鵬尭 高崎健康福祉大学, 薬学部, 研究員 (80643311) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルギン酸 / セシウム / 排泄促進 / 重金属 |
研究実績の概要 |
アルギン酸(alginic acid :Alg)はこれまでにもストロンチウム(Sr)の人体に対する吸収抑制作用が報告されてきたが、その多くは過剰摂取が懸念されるナトリウム塩(Na-Alg)における検討であった。そこで我々はラットを用いてカルシウム塩(Ca-Alg)でも検討を行い、Ca-AlgにはSrだけでなくセシウム(Cs)に対しても吸収抑制効果があることを見出した。昨年度は、ラットを用いたin vivo実験系にて、Na-Algはすでに明らかになっていたSrの吸収抑制効果のみならず、体外への排泄促進効果も有することが示された。一方Ca-Algには、SrだけでなくCsに関しても吸収抑制効果および排泄促進効果があることが示唆された。以上より、AlgはCa塩の方がより有用であることが示された。また安全性の面からもAlgはCa塩の方がより有用であることが示された。 今年度は、各種金属イオンとの親和性とその傾向を検討した。Algのもつ陽イオン交換能には原子価によりその親和性に差があるという報告がある。また我々の研究においてもSrとCsのAlgへの親和性に差が見られたことから,Algに取り込まれる金属原子には特徴的な性質があるものと推定し、Algと各種金属イオンの親和性を検討した。測定金属は、価数やイオン半径が様々なものになるように留意しつつ、ヒトにおいて中毒を引き起す有害重金属等から選択した。現在のところ、イオン半径がある一定領域の金属との親和性が高い傾向が見られおり、その最適半径は価数によって異なる傾向が見られた。またイオン化傾向との相関性は観察されなかった。そのため、同じ金属原子で価数の異なるものを用いた検討を継続する。さらに測定対象を有害金属等からレアアースにまで広げて検討を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットにおけるCa-AlgによるSrおよびCsの吸収抑制・排泄促進効果と、in vitroにおけるNa-AlgとSrおよびCsとの親和性について、学会発表(アルギン酸による重金属の吸収抑制および排泄促進作用とそのメカニズムの検討、P-176、第41回日本毒性学会学術年会、神戸)を行った。8月にはひらめきときめきサイエンスにも採択され、高校生を対象にAlgを用いた実験を実施し、科学の面白さを伝えることができた。 各種金属との親和性に関しては、価数により、それぞれ異なる最適イオン半径の存在が示唆された。またイオン化傾向とは相関性が見られなかった。現在のところ、価数およびイオン半径の影響が大きく、イオン化傾向はあまり影響しないことが示唆されている。そこで、同じ元素で価数のことなるもの(鉄など)を用いて、Algとの親和性の違いを検討し、親和性を左右する要素についてさらに検討していく。またこれらの結果を学会発表するため、第42回日本毒性学会学術年会にエントリーし、採択されている(演題:アルギン酸による重金属吸着作用の解析)。さらにこれらの結果を論文化する予定である。 臨床試験に関しては、資金繰りの関係から単独での実施は難しい状況であるが、別の研究テーマにおいて同時実施が可能と考えられる臨床試験の計画が進んでいることから、実施できる方向で準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ラットにおいてSr およびCs の排泄促進効果が示されたため、その排泄促進効果を臨床試験にて検証するための資金繰りの検討と同時に代替法の検討をしている。代替法としては他の臨床試験と同時に実施する等、実施可能な方法を模索している。 各種金属との親和性に関しては、他の研究テーマの結果から、M/G比に関しては吸着性および汎用性からG-richでの検討が最も妥当と考えられたため、G-richに絞って検討を継続する。 現在までに、Na-Algを用いたin vitroにおける検討において、イオン半径がある一定領域の金属の親和性が高い傾向が見られおり、その最適半径は価数によって異なる傾向が見られた。そのため、同じ金属原子で価数の異なるものを用いてさらに検討を継続し、Algが金属原子を吸着するメカニズムを精査していく。現在のところ、評価対象金属をヒトから取り除きたい有害重金属等から選択しているが、今後は対象をレアアースにも広げて検討していく。さらにNa塩のみならず、カリウムなど別の塩との親和性の検討実施についても検討する。 現在までの実験データの外部発信に関しては、学会発表(第42回日本毒性学会学術年会、エントリー済)および論文化を予定している。 今後Algの金属原子吸着メカニズムが解明されれば、吸着した金属原子の回収も可能であると考えられるため、レアアース類に関してはその回収効率に関しても検討する。
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