研究課題
昨年度までに、ラットを用いたin vivo実験系にて、アルギン酸(alginic acid :Alg)のナトリウム塩(Na-Alg)はストロンチウム(Sr)の吸収抑制・排泄促進効果を有すること、カルシウム塩(Ca-Alg)には、Srだけでなくセシウム(Cs)に関しても効果があることを示した。更にin vitro実験系にてNa-Algによる各種金属イオンの吸着を検討したところ、金属によって差が見られたことを報告した。今年度は更に有害重金属やレアアースを追加して検討した。得られた結果から算出した結合定数は、Sr>Pb>Tb>Dy>Ca>Cd>Mg>Fe(II)>Fe(III)>Co>Al>Ni>Cs>Cu>Ag>Li>K となった。イオン半径がある一定領域の金属との結合定数が高く、その最適半径は価数によって異なる傾向が見られた。結合定数は、2価>3価>>1価となる傾向が見られた。イオン化傾向との相関性は観察されなかった。このことから、アルギン酸の金属イオン吸着メカニズムは、その価数およびイオン半径に影響され、最適イオン半径は価数によって異なることが示唆された。同時に、in vivo実験系でNa-AlgがSrの吸収抑制・排泄促進効果を示し、Csにはその効果を示さなかったことは、結合定数がSr>>Csであることから、またCa-AlgがSrの吸収抑制・排泄促進効果を示したことは、結合定数がSr>Caであることから説明できた。一方で、Ca-AlgがCsに対しても効果を示したことに関しては結合定数のみでは説明できない。別の実験において、Na-Algはより粘性の高い高分子の方が胆汁酸吸着力が高いというデータがあり、粘性の違いも効果に差を与えると考えられる。Ca-Algは化学的な結合ではなく、ゲル化による粘性の上昇に伴う物理的な吸着によってCsに対する効果を発揮した可能性が考えられる。
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