研究課題/領域番号 |
25560063
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
登美 斉俊 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (30334717)
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研究分担者 |
西村 友宏 慶應義塾大学, 薬学部, 助教 (40453518)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胎盤関門 / メチル基供与体 / トランスポーター |
研究概要 |
本研究ではエピジェネティックな胎児期プログラミングに必要となるメチル基供与体について、その輸送を担う胎盤トランスポーターの役割を明らかにすることを目指す。 母体から胎児へのメチル基供与体の移行性を妊娠ラットにおいて評価した結果、メチルテトラヒドロ葉酸およびベタインの胎児移行性は比較薬物であるアンチピリンの10%程度であり、胎児移行性は比較的低いことが示された。一方、ヒト胎盤刷子縁膜ベシクルや胎盤関門モデル細胞であるTR-TBT 18d-1細胞およびJEG-3細胞における解析の結果、メチルテトラヒドロ葉酸およびベタインの輸送には飽和性が示され、トランスポーターを介した輸送機構の存在が示唆された。特にベタインの取り込み輸送は、アミノ酸輸送system Aの特異的基質であるMeAIBによって有意に阻害された一方、GABAでは阻害されなかった。TR-TBT 18d-1細胞におけるMeAIB感受性ベタイン取り込み、およびSystem AサブタイプのうちSNAT2の発現量は高張環境下において著しく上昇することが示された。 ラット胎盤刷子縁膜ベシクルにおけるMeAIB取り込みにはSNAT1およびSNAT2が関与していた。一方、SNAT1, 2, および4を介したベタインの取り込み活性を解析した結果、SNAT2はベタインを基質として輸送する一方、SNAT1および4を介したベタイン輸送は検出されなかった。以上から、胎盤関門においてメチル基供与体トランスポーターが存在すること、特に胎盤関門に発現するSystem AトランスポーターのうちSNAT2のみがベタインを輸送することを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標はメチル基供与体トランスポーターの同定とメチル基供与体胎盤透過性の定量評価にある。本目標に基づき、メチル基供与体の胎盤透過性について解析し、さらにベタインの胎盤における輸送機構として、SNAT2の関与を明らかにできた。胎盤関門においてSNAT1およびSNAT2は基質の多くが共通している一方、メチル基供与体であるベタイン輸送にはSNAT2のみが関与することを示すデータが得られた。この点は予定以上の研究の進展であった。以上から、メチル基供与体の胎児移行機構を理解する上での基盤成果として、十分であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
メチオニンの輸送に関係する可能性が高いアミノ酸輸送系system Lについても胎盤関門における発現局在や機能解明を進める。メチル基供与体輸送における重要性が示唆されたトランスポーター群について、胎盤関門におけるタンパク絶対発現量の解析を進めると共に、低栄養モデルラットにおける発現量変動を解析する。解析を通じて、低栄養時に胎児移行量が制御されるメチル基供与体を明らかにするとともに、胎児エピゲノムへの影響についても解析を進めて行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はモデル細胞等を最大限に活用することで効率的に研究を遂行することができ、妊娠ラットやRI標識化合物にかかる費用を抑えつつ、十分な成果を得ることができた。また、旅費や学会参加費も結果として予定より抑えられ、本年度使用額は計画よりも少額となった。 次年度使用予定額は増額となるが、低栄養モデルラットにおける解析など妊娠ラットを用いた解析が不可欠なため、その購入に多額の費用を要する。さらに、当初の想定を超えた数のトランスポーターがメチル基供与体輸送に関与する可能性が示唆されたため、それらトランスポーターの胎盤における局在の解析等のために、多くの抗体を必要とする。本研究計画に必要な実験設備は現有しているため、高額な設備備品購入は必要としない。その他、研究成果発表のための学会参加費、および研究成果を英語論文として発表するための論文校閲費および投稿費としても使用予定である。
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