文献調査により、イソフラボン配糖体は小腸でβ-グルコシダーゼで糖が外れ、アグリコン部が小腸から吸収されることが判明した。そこでアピオスに含有されるイソフラボンアグリコンについての生理活性を種々検討した。アピオスのメタノール抽出物をβ-グルコシダーゼ処理したのち、ODS HPLCで分取を行い、4種類のアピオスイソフラボンアグリコン(A~D)を得た。これらについて、男性ホルモン(androgen receptor)及び女性ホルモン(estrogen receptor)への結合能、α‐グルコシダーゼ阻害作用について検討したところ、これらのうちB(2'-hydroxygenistein)がgenisteinの約1/2程度の優れたestrogen receptorへの結合作用、α‐グルコシダーゼ阻害作用を有することを見出した。そこでさらにBのestrogen receptorへの作用がagonist作用であるのか、antagonist作用であるのかについて、MCF-7(estrogen感受性ヒト乳がん細胞)の増殖に及ぼす影響により、検討した。その結果、Bがgensitein同様にpartial estrogen agonistとして作用することを、初めて明らかとすることができた。また種々の加熱調理により、イソフラボン配糖体がその程度失われるかについて検討した結果、高温調理ほど失われる割合が高いことを初めて明らかにすることができた。 さらにアピオスに含有されるイソフラボンアグリコンは構造的にユニークであったので(フラボン骨格B環の2'位にOHがある)、分担研究者である三沢典彦教授が保有する種々のP450組み換え大腸菌とgenisteinを共培養することにより、2'-OH genisteinの調製を試みた。その結果genisteinにOH基を導入することのできるP450を見出すに至った。
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