研究概要 |
食生活因子が老化速度に与える影響を検討するため、マウスに様々な食餌条件を与えた際に、加齢性難聴の進行度合いがどのように変化するのかを試験している。まず始めに、マウスの聴性脳幹反応試験(ABR)による聴力測定実験系をセットアップした。C57BL/6J系統の若齢マウス(3ヶ月齢)において、8, 16, 32kHzの音刺激に対して、20-30dBの低い閾値で反応が取れることを確認し、実験系が正常に機能していることを確認した。2ヶ月齢の雄マウス100匹を10群に分け、1群を若齢コントロールとして、3ヶ月齢における聴力を測定し、内耳を含む全身の組織をサンプリングした。残りの9群は、以下の各食餌条件で6ヶ月間の試験飼育を行った。1. 通常食、2. 高脂肪食、3. 高脂肪高ショ糖食、4. 高脂肪食 + 人工甘味料(飲水)、5. 高食塩食(4% NaCl)、6. カフェイン(0.05%, 飲水)、7. アルコール(5%, 飲水)、8. 通常食(週1回24時間の絶食)、9. 高脂肪高ショ糖食(週1回24時間の絶食)。高脂肪食あるいは高脂肪高ショ糖食を与えた群は、絶食や人工甘味料の有無に関わらず、有意に体重の増加が認められた。現在、聴力測定および組織サンプリングを行い、聴力の閾値と内耳神経の残存細胞数から、加齢性難聴の進行度合いを解析中である。予備的な結果では、高脂肪食により加齢性難聴の進行が促進されることが示唆されている。
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