研究実績の概要 |
本研究課題は,タブレットPC,スマートフォンなどの携帯端末でも容易に利用可能な,大学生向けのe-learningシステムの構築を目指すものである.具体的な教材として,「オートマトン・言語理論」に興味を絞って,各種の端末の利点を活かしたシステムのプロトタイプを作成することを目標として研究を行った. まず,対話的なパズルゲームとしてこれを教材化するためにプログラム言語Haxeを用いてシステムを実装し,Windows, Mac, Android, iOSそれぞれの環境のもとで違和感なく操作できることを確認した.また,言語理論で最も重要な課題の一つである反復補題について,これを理解しやすいように対話的にユーザに提示するためのシステムをJavaScriptを用いて実装した.最終年度は,オートマトン・言語理論に関する和文,英文の教科書を網羅的に調査し,反復補題に関する設問を統一的な記述で整理し直し,提示する作業を行った. 一方,計算学習理論の観点から,与えられた例に矛盾しない最小の決定性有限オートマトンを求める問題の解析に取り組んだ.これは最小無矛盾問題としてしられ,確率的近似学習(PAC学習)の多項式時間学習可能性と密接に関連しており,一般の入力についてNP困難であり,また近似も難しいことが既に知られている.我々はこの問題に対して,入力のすべての文字列がある文字列の接頭辞になっている場合についての解析を行い,アルファベットサイズが2以上ならばこの制限の元でもNP困難であり近似も同様に困難であること,またアルファベットサイズが1のときは多項式時間で解けることを明らかにした.上記のパズルゲームはこの困難性に基づくものである.
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