生命活動に置いて重要な役割を担う蛋白質が作用するときにはその形(構造)を変化させる。通常蛋白質の多くは無色であり、且つその形の変化は極めて速いために、肉眼で見ることはできない。しかしこれが可能になると蛋白が機能するということについて実感を伴いながらの理解に繋がる。自身が色を持ち構造変化に伴い色を変える光感受性の蛋白質にアミノ酸置換の変異を導入し構造変化を遅くすることができれば、高価な装置無しで広く用いることのできる教材作製が可能となる。そういう蛋白質分子の構造変化の可視化教材作製を本研究の目的とする。その種のものはほとんど報告されておらず、実現できれば極めて斬新な教材となる。光感受性の色素蛋白質の中で、光を吸収しても分解せず安定性も高いものが多い細菌型ロドプシンに着目し、最初に発見され最も研究が進んでいるバクテリオロドプシン(bR)を研究対象とした。bRは遺伝子操作により部位特異的変異導入が可能であるので、得られていた知見を基に変異蛋白質を作製した。幸運なことに初年度に有望な変異蛋白質を得たので、大量調製を行い種々の性質を天然型蛋白質と比較しながら調べた。その結果構造変化を肉眼で認識できる程度に遅延化(半減期約6~8秒)させることができ且つ室温で容易に取り扱える程度の安定性を有する変異蛋白質を得ることに成功した。教材とするときにはどのような形で提供すべきかについて、用いる容器についても取り扱いやすさや価格の面からも検討を加えた。結果的に一般の高校の実験室又は教室でも扱うことが可能な教材を得ることに成功した。
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