研究課題/領域番号 |
25560070
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
二ノ宮リム さち 東京農工大学, 国際センター, 准教授 (90646499)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ESD / 環境人材育成 / 現場体験 / 大学 / 高等教育 / 持続可能な開発のための教育 / 環境教育 / レジリアンス |
研究概要 |
本研究は、近年大学のESDとして実践が広がる環境人材育成の事例を批判的に検討し、特にその多くが推進する「現場体験」について、現場「についての」「を通じた」教育から現場「のための」教育へ発展させる必要性と、学生と地域の「レジリアンス育成」、従来の専門的・科学的教育との衝突を乗り越える「アンラーン(unlearn)」の過程に着目しつつ、意義と課題を明らかにすることを目的とする。上記目的の達成に向けて、今年度は下記を実施した。 1.文献レビュー:「高等教育の環境教育・ESD」「現場と教育・学習」「体験(経験)教育(学習)」「レジリアンス」「知のあり方(ローカルな知とアンラーン)」等の視点から先行研究を検討し、議論の枠組を形成した。 2.大学の環境人材育成事例の調査:ESDの10年における重点的取組の一つとされる文科省戦略的環境リーダー育成拠点形成事業について、各実施大学の報告書や発表資料等から、実施体制や教育内容におけるESDとしての可能性と課題を分析した。 3.上記事例関係者への聞き取り:上記事業のもと東京農工大学が実施する環境人材育成プログラムの関係教員・学生・修了生を対象に半構造化インタビューを行い、「現場体験」の意義や課題と、「現場のための教育」と専門教育との衝突やそれを乗り越える「アンラーン」のプロセスと課題に関して聞き取りを行った。 4.2~3で得られたデータの分析:上記で得た発言等についてコーディングと分類化によって「現場体験」の意義と課題に関する考え方や視点を抽出・整理した。 5.研究経過・成果の発表:以上の経過や成果について、共生社会システム学会誌(7月)、日本社会教育学会6月集会、世界環境教育会議(6月)、日本環境教育学会年次大会(7月)、日本社会教育学会年次大会(9月)等で発表した。くわえて、複数の論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のとおり、目的達成へ向け、関連テーマにおける文献レビューを行い、環境人材育成事業における実践事例を横断的に調査するとともに、そのうち一事例の関係者への聞き取りを実施し、それらを通じて得られたデータを分析して批判的に検討して、そうした調査の経過や成果を複数の学会発表や学会誌を通じて公表することができたことから、当初予定していた活動が概ね順調に進展したといえる。 しかし、当初想定していた「現場体験を、現場『のための』教育へ発展させることによって学生と地域のレジリアンス(変化に適応してストレスから速やかに回復する能力)育成が進展する」という仮説について、特にローカルな知と普遍的な知の衝突、それを乗り越えるアンラーンの過程に着目して説明するという計画については、研究を進める中で、アンラーンの過程について事前に想定していなかった状況があることがわかり、その状況がレジリアンス育成につながる可能性と課題についてさらに検討を深める必要性が生じた。このため、アンラーンが現実に学生や教員、教育機関や地域のレジリアンスを育む可能性と課題に関する検討と、その結果に関する学会発表や論文執筆は、計画を変更して次年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度となることから、「現場体験を、現場『のための』教育へ発展させることによって学生と地域のレジリアンス(変化に適応してストレスから速やかに回復する能力)育成が進展する」という仮説の検証を具体的に進め、結論を構築する。今年度の研究活動の中で明らかとなってきた、アンラーンの過程における状況について、さらに修了生を中心とした聞き取りやその結果の分析を進める。その際、今年度新たに導入したデータ分析ソフトウェアを活用する。その上で、そうしたアンラーンの状況が現実に学生や教員、教育機関や地域のレジリアンスを育む可能性と課題について、具体的に検討を進めることとする。また、そうした研究活動の経過と成果は、引き続き学会発表や学会誌で公表し、他の関連研究者と共有し、議論を深める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度中に、聞き取り結果を「現場のための教育」を通じたレジリアンス育成、特にローカルな知と普遍的な知の衝突、それを乗り越えるアンラーンの過程に着目しつつ分析し、その結果を発表する予定であったが、アンラーンの過程について、事前に想定していなかった状況があることが明らかとなり、計画を変更してその状況がレジリアンス育成につながる可能性と課題の検討を深める必要が生じたため、未使用額が生じた。 聞き取り結果における、ローカルな知や普遍的な知の衝突、アンラーンの過程に関するより詳細な分析と、そのようなアンラーンが現実に学生や教員、教育機関や地域のレジリアンスを育む可能性と課題に関する検討と、その結果に関する学会発表や論文執筆を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとする。
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