研究課題/領域番号 |
25560072
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小林 昭三 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 名誉教授 (10018822)
|
研究分担者 |
興治 文子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60409050)
伊藤 克美 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50242392)
矢田 俊文 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40200521)
岡野 勉 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30233357)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 明治中期科学教育の新実態 / 高等小学校生徒授業筆記 / 小学校生徒用物理書 / 教育実習教案筆記 / 世界トップレベルの理数教育 / アクティブ・ラーニング型授業法 / 開発主義的授業法 / 原子・分子論と階層的自然観 |
研究概要 |
全国各地(新潟,埼玉,群馬,静岡,茨城,栃木,神奈川,福島,広島,岡山,徳島,秋田,他) の文書館を探索し,理数分野に重点化して,明治期の高等小学校生徒の授業筆記や,師範学校生徒による高等小における教育実習教案筆記等を多数発見した.それにより,明治20年代以後においても,①物理学・化学・生理学・金石学等の科学分野の教育が実施されてきた.②当時の世界最高レベルの科学や理科の教育,数学や算数の教育の各分野の革新を生む授業が実施されたことを証拠づける授業記録を多数発見した.③学制(明治5年)時代に着手され,十年程の試行を経,小学校教則綱領(明治14年)時代にかけて本格化された理数教育の潮流が,明治20年代以後にも各地で開花したことを跡付けた.その特徴は④理数分野で共通した国際的な源流を持つ特徴的教授法(開発主義や実験を重視)だった.⑤当時の世界先端レベルの物理学や化学や算数等が実施された.等を解明した. 特筆すべき成果としては,①新潟県立歴史観所蔵の「明治23年における新潟県尋常師範学校生徒・倉茂吾八の高等小学校での教育実習教案・理科分野教案と算数分野教案」を発掘し史的価値を解明.②理科教案は「後藤牧太達の小学校生徒用物理書」を用いた明治23年の授業実態を確証.③教師と生徒の間で対話・問答を繰り広げて重要実験をして授業課題を解明する開発主義的な授業法の実態解明.等を日本で初めて実現できた. さらに,④明治33年の埼玉大里高等小学校4年・松岡豊吉「物理学筆記」のアクティブ・ラーニング型授業筆記と当時の原子・分子論と階層的自然観や物質進化の考え方における国際的連関を解明した.⑤明治39-40年の十日町高等小学校3-4年の松沢やう「理科筆記4巻」で原子・分子論を重視した科学教育の実施確証した.等の原子・分子論・階層的自然観を重視した明治20年~40年の注目すべき教育史的新知見を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新潟県においては,村上や与板・小千谷・十日町の高等小学校生徒の授業筆記を発見し,特に,明治中期の高等小学校と新潟師範学校の授業とそれらの関係を同時に解明できる「教育実習の教案筆記」等の発見とその解明を本研究計画の基で,相次いで実現してきている.しかもそれを契機に,新潟の文書館を皮切りに,埼玉,群馬,神奈川.静岡,茨城,福島などの文書館での授業記録の文献探索と調査分析によって,新潟同様な手法で,新たな授業実態の解明を次々と進展させることができた.従来までの法令や教科書や文部省の訪問調査記録等のデータ分析レベルの歴史的知見は,各地の文書館の授業筆記や試験答案などの生の記録調査分析により大幅に書き換える必然性が本研究で初確証された. さらに,日本全国において「高等小学校生徒の理科、物理学、化学、生理学等の授業筆記と試験問題や試験答案」を大量に発見し,詳細に分析する好機に恵まれてきてる.それは,全国の都道府県の5割ほどの文書館において文書リストのデジタル化が近年に開始され網羅的な調査の急進展が可能になりつつある背景がある(但し,授業筆記のような生データが残っていない都道府県も多く,ウェブ上公開されていない所はその訪問後に存在を確証).残る5割ほどの府県でも今後にデジタルデータ化が進む可能性や,直接に文書リストや記録所蔵の場所を探索する目途を探りつつある.本州の全県の探索を,四国の徳島での探索開始に広げたが,今後は残る北海道と九州の各県における探索を5月以降に開始する段階に至りつつある. 日本各地の文書館で発見した多数の歴史的な価値ある授業記録(従来は教科書や法令が主でこれは分析されなかった)のような,本研究の初年度の従来に無い新証拠に基づく研究計画の急進展が実現した.今後,日本の全国的な展開による本研究の2年目への段階を達成する見通しが得られて,当初計画以上に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに文書リストのデジタル化がかなり開始されている全国の都道府県の5割ほどの文書館での探索調査では,科学・理科に加え,算数・数学分野までの重要授業記録文書に関する網羅的な探索を中心に,文書探索と文書分析の研究を急速に進めてきたので,今後ともその継続的な探索と特徴的な分析を推進する.そして,新潟・静岡・茨城・福島・群馬・埼玉・栃木・神奈川・東京・名古屋・大阪・山口・仙台・秋田・岡山・広島・鳥取・島根・長野・福井などの注目すべき豊富な探索結果を重点的に集約・整理し,かなり網羅的なデジタル化を実現した概要を整理分析して公表する.特に注目すべき成果としての歴史的な新知見については,学会発表や論文作成や報告集公表などを進める.研究会やシンポジウムでの成果報告・発表会,世界的国際会議での発表等を最終年に実施する. 新たに,今後も特に注目すべき文書の追加が発掘・分析・新展開できる見通しを得ている重点県(新潟・群馬・埼玉・静岡・長野・神奈川)等についての調査継続や,その他の日本国内の広範な地域における「明治20年代の高等小学校生徒の理科・科学授業の実相の解明」と世界的位置づけについて本研究課題の研究計画を,さらに展開・推進する。残されている「本州の青森・岩手・山形・山梨・岐阜・三重・和歌山・京都・兵庫・石川・富山」や,開始しつつある「四国・北海道・九州」における,明治20年代の高等小学校生徒の授業筆記や試験問題答案」の発掘探索を,今後も可能な限り精力的に推進する. それらの授業記録に関する文書の詳細な整理・分析を推進して、その特徴的な概要や新知見については,論文として内外に発表する.日本全国におけるそれらの実態を確かめ,本研究計画の成果をまとめて,国内・国外での学会・研究会・研究交流で公表し、成果の普及を図り,今日的価値ある理科・科学教授用の新素材として新展開することを目指す.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者,及び,研究分担者の2名(興治文子・矢田俊文)については,基本的に平成25年度中に当該年度の全所要額の手続きを完了しているが,手続きをした当該助成金(物品や旅費等)の一部についての支払いが平成25年度中に終了していないために,それが翌年度分として移行したものである. 研究分担者の1名(岡野勉)については,平成25年度中に手続きした当該助成金(物品や旅費等)の中の25657円分の支払いが平成25年度中に終了していないために,翌年度分として移行したものである.また,平成26年度の研究計画を実施するために24680円を次年度の使用額に移行した.このような2種類の移行分の合算額が翌年度分として移行したものである. 研究代表者及び研究分担者の2名(興治文子・矢田俊文)については,25年度中に当該年度の全所要額の手続きを完了しているので,平成26年4月中にはその支払が完了する。 研究分担者の1名(岡野勉)については,平成25年度中に手続きした25657円分は,平成26年4月中にはその支払が完了する予定である。さらに,平成26年度の研究計画を実施するために移行した24680円については,これを次年度使用額として使用するものである.
|