本研究の目的は、パフォーマンス評価をこれまでに主に使用されてきた「学習状況の把握」のための方法としてだけではなく,生徒自身が「学習状況の自覚」を促し,メタ認知能力の獲得を意図して理科授業に活用するための手法の開発であった。このようなパフォーマンス評価の導入は,科学的概念を獲得できたかできないかといった自覚のみならず,児童生徒が自らの思考過程の自覚を促す。このことにより,その思考過程が科学的思考となり得ていたかどうかについて,教師のみならず児童生徒自身が診断することができる。このような学習過程の連続によって,科学的思考,論理的思考といった科学リテラシーの育成にも寄与できることが本研究の意義である。 これに対し、「予想の表明を複数回行わせること」、「既習の事項を利用して新たな問題場面を説明させること」などを仮説として授業研究を推進した。その結果、これらの仮説がパフォーマンス評価をメタ認知能力の育成に利用するために効果的であったことが確認された。特に、予想の内容を一覧表にしたうえで複数回予想の機会を設けることで、他者の予想、自己の予想の変容、実験結果の推移といった子どもが自らの考えを変容させる根拠を明確にする効果が確認された。また、問題場面を説明するパフォーマンスにおいては、既習事項でありながら、明確に説明できないという事態に説明した児童自身が気付いた事例が多数確認できた。これらの児童にとってこの経験は、いうまでもなくこれらの既習事項について改めて理解し直すきっかけとなった。 研究の最終段階においては、これらの授業研究等の蓄積により、小学校理科における全単元でのパフォーマンス評価実例集を完成させることができた。今後は、この実例集を研究協力者及び近隣の授業実践者に配布し、これに基づき実践を重ねていただき、内容の妥当性を再検討したい。
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