研究課題/領域番号 |
25560089
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
杉本 裕二 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (90311167)
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研究分担者 |
浅井 紀久夫 放送大学, 教養学部, 准教授 (90290874)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 拡張現実感 / インタフェース / 臨場感 |
研究概要 |
本研究の目的は、博物館などアミューズメントを演出する学習場面で、学習コンテンツを効果的に提示するために、拡張現実感を利用した提示手法を構築することである。そのために、拡張現実環境において高い臨場感を保持する提示要素として、現実空間と仮想物体との幾何学的不整合、光学的不整合、時間的不整合の影響を考慮してコンテンツを作成する。 当該年度は、画像認識ライブラリを利用し、拡張現実感を利用したコンテンツのプロトタイプを実装した。科学館での展示を想定しており、楽しく体験しながら学べる学習コンテンツを目指してシステムを設計した。題材として自動車を選定し、道路交通システムを自動車の運転手の立場から学べるようにするため、仮想的な道路交通環境を提示できるようにした。本システムについては、国際会議において研究発表した。 利用者は実物のミニチュアカーを操縦し、そのミニチュアカーに搭載された可視光カメラの映像とその映像に重畳された仮想物体を見る。仮想物体は、カメラ映像の現実空間の幾何学的配置に基づいて表示される。仮想物体としてビルや信号機などが表示され、仮想的な道路交通環境が提示される。 現実空間の幾何学的配置を認識するために、複数の光学マーカを床面に設置し、可視光カメラの映像からその位置姿勢を推定した。この光学マーカだけでは、位置姿勢の推定精度が低いため、ミニチュアカーに赤外線マーカ3つを設置し、これを天井の赤外線カメラで追跡した。光学マーカによる位置姿勢を、赤外線マーカによる位置姿勢で補正処理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
画像認識ライブラリを利用し、拡張現実感を利用したコンテンツのプロトタイプを設計・構築するという当初計画は達成したと考えている。科学館展示に供するための学習要素やシステムの安定性は不十分であるものの、現実シーンに仮想物体を視点に応じて重畳提示するという拡張現実感環境は実現できている。学習コンテンツにおいて、現実空間と仮想物体との幾何学的不整合、光学的不整合、時間的不整合の影響を検討するための基盤は整備された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度構築したプロトタイプの安定性を高め、学習コンテンツとしての機能を充実させる。今回は、光学マーカと赤外線マーカを併用したが、展示物にこれらのマーカを付与することは、学習の妨げとなる可能性もあるため、マーカレスでカメラの位置姿勢を推定する仕組みを導入する予定である。カメラから得られた映像において特徴抽出を行い、これに基づいてカメラの位置姿勢を推定する画像認識ソフトウェアを組み込む。現在は、ミニチュアカーを操縦するという体験を重視したコンテンツになっているが、科学館の実際の展示を意識したコンテンツを設計し、構築していく。こうしたコンテンツに組み込むための素材を作成していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度計画していたプロトタイプの構築において、カメラの位置姿勢推定機能についてはソフトウェア上の問題があり、本科研費の予算範囲では実現が困難であることがわかった。そこで、比較的容易に実装できる従来手法を採用した上で、高機能化を進めていた。しかし、高機能化の設計に時間がかかり、年度内に予算執行に至らなかった。 次年度は、プロトタイプシステムの安定性を高め、学習コンテンツとしての機能を充実させる。システムの安定性を改善するため、カメラの位置姿勢の推定精度を高める仕組みを組み込む予定である。そのために、奥行き距離を測定する装置を導入する計画である。この仕組みをコンテンツに実装するための装置及び開発費が必要である。システムや機能について、当該研究分野の学会等で発表する予定であり、そのための旅費が必要である。
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