これまでの研究成果をベースに、高専電子系専門教育における新教材や新教育法を開発するべく、高専本科5年生の卒業研究において、分子軌道法や分子動力学法を用いた研究テーマを組み込み、以下のような研究成果をあげることができた。 分子軌道法を用いた研究では、炭素原子数を変えたフラーレンを構築し、バンドギャップや原子間距離について検討した。また、液晶が有する誘電率異方性や屈折率異方性に着目し、特に強誘電性液晶において分極率や双極子モーメントから異方性を求める取り組みを行った。分子動力学法を用いた研究では、太陽電池の材料として注目されている水素化アモルファスシリコンに着目し、水素を含まないアモルファスシリコンと物性について比較・検討した。また、バイオエレクトロニクス分野における生体材料に着目し、両界面が水の脂質二分子膜を構築して温度変化に対する構造変化を検討した。 また、教材や教育法の開発ツールとして、高機能で高速なグラフ作成・考察ツールであり、ほぼ全ての種類のOSに対応し、かつ、東北大学の学生達の間で長い間使われているGP.exeと呼ばれるソフトウェアツールを再構成して運用できるようにした。そして新たな教育法の開発において、金属および合金中の原子の拡散に関する基礎的な考察を行った。 3年間の研究により、分子軌道法と分子動力学法を活用した新たな教材の開発と、開発した教材を電子系授業において有効活用するための新たな教育法を開発した。それらは、カラフルで美しく視覚に訴え、直感的な理解を実現でき、学生の興味を誘発する電子材料教材であり、深く広く自学自習でき、創造性を育むアクティブラーニング教育法である。
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