研究課題/領域番号 |
25560097
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
河野 孝央 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20300733)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線教育 / 自然放射能線源 / 分担測定法 |
研究概要 |
本研究は、①教育器材の製作、②教育実践法の構築、③教育実践と普及活動、の3本の柱で構成される。 平成25年度の研究実績として①では、使いやすさと分かりやすさの観点から、国内産18種の乾燥昆布の場合で、どれを用いても同様の形状で丈夫な自然放射能線源が製作できること、そして線源強度は種類によって3倍程度の違いがあること、さらに線源強度の適した昆布材料を選択するための簡易測定法を見いだした。またもう一方の重要な教材である検出器について、市販のキットで計数回路を試作し、縫い針を陽極にした放射線検出器を設計、試作して、特に検出器のガス圧安定化と計数ガス漏れの問題解決が重要であることが分かった。 ②では、放射線の単位であるシーベルトとベクレルを分かりやすく説明するアニメーションを含むスライドを作成して、放射線業務従事者教育などに適用し、有効な方法であることを確認した。また10数人以下のグループで放射線の性質を考えながら実施する分担測定法を考案して、研究所に見学にきた高校生を対象に、実践し、実習を楽しみながら受講できることを確認して、学術誌に論文発表を行った。そのほか放射線計測における計数の変動について、経験と知識を結びつけて理解するための実習法を構築し、小学校、中学、高等学校の先生方を対象にした放射線教育現場で実践して、有効性を確認し、論文投稿を行った。 ③については、一部を②に示したが、そのほか、シーベルトやベクレルの単位を理解するために開発したスライドを用いて名古屋市内の大学における放射線教育で実践したほか、放射線関係者の研修会で自然放射能線源の活用に関する講演を行うほか、国際会議や国内学会等の機会を活用して、放射線教育の普及に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3本柱の課題のうち①教育器材の製作における自然放射能線源の改良では、化学肥料線源の堅牢化と乾燥昆布の材料評価が当初の計画以上に進展し、特に乾燥昆布を材料にした自然放射能線源の製作は、まもなく論文化できる見込みであり、さらに新しい線源材料を見いだすなど、当初の計画を超えた内容で研究が進んだ。しかしながら針計数管の設計と製作は、予定より遅れている。その原因として、予算節減のため回路を市販品ベースに製作する方針に変えたことがあげられる。そのため試作はしたものの、完成は次年度になった。また針計数管の製作においても材料を整備し試作したが、ガス漏れの問題が意外に大きく、完成は次年度になった。 ②教育実践法の構築については、特に放射線の重要な単位である「ベクレル」の説明、そして同じ「シーベルト」を単位に持つ5つの放射線線量(等価線量、実効線量、1cm線量等量、70μm線量等量、預託線量)を、明確に区別して説明するためのPPTスライドを製作し、放射線教育現場に適用して、その有効性を確認した。このほか、放射線測定実習をグループ参加により効果的に実施するための分担測定法を構築、高校生を対象に実践して、成果の論文発表を行い、また放射線計数の統計的変動を理解するための実習法を構築し、教育現場に適用して有効性を確認した。 最後の柱である③教育実践と普及活動については、放射線業務従事者講習会や見学に来所した高校生を対象に自然放射能線源を用いた放射線測定実習を実施するとともに、国際会議や国内の学会、研修会などで研究発表や講演を行うことにより普及活動に努め、好評を得るに至った。 以上、①の柱で回路・検出器の完成は次年度へ持ち越すことになったが、自然放射能線源の予想以上の進展と②、③における順調な進展でプラス・マイナスでゼロになるため、おおむね順調であると、評価した
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今後の研究の推進方策 |
本研究を構成している3つの柱、①教育器材の製作、②教育実践法の構築、③教育実践と普及活動において、①に属する検出器と回路の製作は当初の予定より遅れを生じているが、自然放射能線源の製作と、②と③の柱については、予定以上の進展があり、26年度の早い時期に完成できる見込みである。従って、検出器と回路の製作以外の項目については、これまでと同様のペースで研究を進めるとともに、国際会議や学会発表、論文化により公表し、自然放射能線源を用いた「「放射線の測定と単位」を理解するための放射線測定実習法、および教材」の普及に努める。なお、検出器と回路について、当初の予定は100%独自開発であったが、検出器についてはなお独自開発を進めるものの、回路については安価な市販品をベースにして、製作したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
実習用器具等の製作部品と材料を購入するにあたり、次年度の予算に組み込んで、購入したほうが、合理的であるため。 次年度の実習用器具等の製作部品と材料購入費に50000円を考えているが、この金額に(B-A)の金額を加えた約100000円を、必要な部品と材料を購入に充てる予定である。
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