研究課題/領域番号 |
25560100
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山下 淳 筑波大学, システム情報系, 講師 (80345157)
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研究分担者 |
鈴木 栄幸 茨城大学, 人文学部, 教授 (20323199)
加藤 浩 放送大学, 教養学部, 教授 (80332146)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プレゼンテーション能力 / リアルタイム評価 / 状況内評価 / 小型端末 / ユーザビリティ |
研究概要 |
本研究の目的は、発表者によるプレゼンテーション(以下、プレゼン)、もしくはその練習中に聴き手による評価をリアルタイムで発表者にフィードバックするシステムの構築である。このシステムを構築により、その場その時の内容に応じてプレゼン修正を可能とするプレゼン技能の向上が期待できる。 今年度の研究実施計画として、(1)リアルタイム評価システムの開発、(2)評価用形容詞群の抽出、(3)携帯端末のユーザビリティテストを挙げ、この実施計画に従い、システム開発、実験および分析を行った。 (1)リアルタイム評価システムの開発においては、赤外線を用いた評価方法を提案した。発表者には赤外線で固有のIDを発信するバッジを取り付け、聴き手にはその信号を受信できる装置を取り付ける。赤外線は強い指向性を持つため、聴き手が持つ端末で赤外線を受信するには端末を適切な方向に向ける必要がある。この特性を利用して、対象人物を特定し、かつ発表者からみると発表者本人が指摘されているように見えるインタフェースを作成する。この効果を確認するため、赤外線を用いず常に評価できるシステムを用いた評価者(実験群)と、今回開発したシステムにより、端末を相手に向けない限り評価できないシステムを用いた評価者(統制群)の間で評価に対する印象などを比較した結果、統制群において、「より責任をもって評価することができた」という結果を得られた。 (2)評価用形容詞群の抽出においては、実際の討論場面を録画し、それらの中からよく使われる形容詞群のうち、発生頻度が高いものを抽出した。 (3)携帯端末のユーザビリティテストにおいては、評価したいと思ったその瞬間に評価できるようなシステムデザインを行った。一例として、(2)で得られた形容詞対を選択するメニュー階層を、プレゼンに関する資料を参考にデザインし、実際に評価実験することにより最適なものを決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究実施計画における(1)リアルタイム評価システムの開発において、当初計画では発表者の特定のため、発表者に赤外線IDを発信するバッジを取り付ける方法を提案し、実装した。 一方、今年度研究に用いた小型端末(Android端末やiOS搭載端末)における画像処理能力は研究計画立案時の能力を遙かに超え、ほぼリアルタイムで画像処理を行えるようになった。その中の特徴的な処理の一つに顔画像認識がある。 本研究の実施初期における調査段階にて、小型端末でも実装でき、かつ認識率がほぼ100%の認識手法について参考文献を得ることができ、また研究代表者が所属する組織内でその認識手法について助言を頂くことができる体制が得られたため、顔画像認識を用いた評価対象の認識手法の実装についても平行して実施した。 この手法は予め認識対象となる人物の顔画像を100枚程度記録し、特徴ベクトルを作成する必要があるものの、そのアルゴリズムは小型端末においても処理できるほど簡易であるため、評価時の負荷も低く抑えることができる。 以上のように、今年度は当初予定していた認識手法以外の手法でも評価対象を認識する手法を実装することで、より安定した認識方式を確立することができた。 本計画において、評価者の特定は最も重要な部分であり、その部分において赤外線IDと顔画像認識という複数の認識手法を取り入れることができたことは、この研究が萌芽的な研究から、教育現場などでの利用といった実践的な利用を視野に入れることができるようになったことが、評価を(1)当初の計画以上に進展している、と自己評価した理由である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的なシステムについては、今年度において概ね実装することができたため、今後は当初の予定通り実証実験を視野に入れたシステムの改良と実験の実施、また実験データの分析を行う。 また、新たな取り組みとして、今年度取り入れた顔画像認識による被評価者の特定のほか、評価者が口にした評価に関するつぶやき(なるほど、違う、など)を自動的に取り込むシステムの適用を検討する。このシステムは、研究代表者が取り組んでいる別の課題において実施している研究であるが、その進捗も概ね順調であり、また本提案に取り組むことも可能であるため、全体の進捗を見ながら統合を試みる。
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