現在,誰もがパソコンや携帯端末などでオンライン地図(例えば,グーグルマップやヤフーマップなど)を利用している。また,最近のタブレット端末は画面の拡大操作や読み上げ操作などのアクセシビリティ機能が充実した結果,弱視者はオンライン地図を使えるようになった。しかし,全盲者は未だに旧来からの触地図に頼るのみである。本研究課題は,触地図とオンライン地図との情報共有化を図り,全盲者でもオンライン地図の便利な機能や情報支援が受けられることを目標としている。 平成25年度の成果である“オンライン地図からの道路情報抽出”と“ベクトルデータ型の簡易触地図作成”をもとに,平成26年度は簡易触地図と元のオンライン地図との間で情報の共有化を図った。そのためには簡易触地図上での触指位置検出が必要となる。近年,パソコンに手書き文字を入力する電子ペンが普及しているが,その原理である赤外線・超音波法(赤外線と超音波の時間差で位置を同定する)を用いて,触指位置の検出プログラムを作成した。研究計画では,赤外線・超音波法を用いた指サック型の触指位置検出装置の開発を目指していたが,センサの精度やノイズによる誤差の関係上,触地図のような狭い2次元平面では触指位置の同定が難しい場面が生じた。そのため,指先に貼り付けたマーカーを高性能カメラが認識して位置を同定する光学的手法を併用して,被験者の触指位置の検出を行った。構築したシステムで実験した結果,簡易触地図とオンライン地図との位置同期がとれて,全盲者でもオンライン地図の情報や機能を受け取れることが確認できた。また,触指位置の検出は図形のエッジ軌跡を追跡できるので,被験者がどのように図形イメージを把握するのかを計測可能になった。これは,視覚障害者が行う図形イメージの獲得分析や認知理解へのアクセシビリティ支援に展開できる。
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