本研究では,海外での学校における著作権制度の調査と分類を試みた.その結果,学校独自に著作権使用に関する契約を行っているところ,地方自治体にて著作権資料に関する契約を行っているところなどの違いを知ることができた.さらに,学校における著作物の流通について,地方自治体の教育委員会などがサンプル調査を行い実態を把握している国があること,さらに学校ごとに著作権管理を行っているところなどの分類が行えた. 一方,学校における教員の著作権に関する知識や意識については,国による差はあまりないことが分かった.特に教員の担当する教科に依存する傾向もなく,学校で取り扱われる内容として国語での引用指導や,情報における情報モラルの一部として,日本の教員は 著作権を意識している実態も調査することができた.以上をまとめると,海外などの事例より,日本における著作権に関する制度設計において,各教員および学校長に対してて著作権に関する知識と意識の向上を図る段階であり,早急で拘束力の強い制度の導入は時期尚早であると考えられる. あえて著作権の補償金に相当する制度を提案するならば,ドイツ型の幅広く学校教育に関わる補償金制度と緩やかな運用方法と,ニュージーランド型の各学校ごとの取り組みを教育委員会が取りまとめる制度の両方をミックスした形が理想的であると本研究の結果から示されたと考えられる.
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