研究課題/領域番号 |
25560108
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
池田 満 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (80212786)
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研究分担者 |
小川 泰右 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (60586600)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 防災協調学習 / オントロジー |
研究概要 |
1 家族としての市民リテラシー学習目標に関する初期オントロジーの構築:初期オントロジーの役割は,本研究に関わる研究分担者・協力者が,学習目標に関する理解を共有・洗練することと,学習プログラムの設計の合理性を視覚化された概念モデル上で検証できるようにすることにある.本年度は、社会心理学・社会学・教育心理学・教育工学の文献レビューに基づき初期オントロジーを構築した. 2 学習プログラムの試行実験:1)で作成したオントロジーに基づいて、学習プログラムを構成し、小規模な試行実験を行った。実験参加者(大学生80名)に,はじめに避難時危険箇所等の簡単な防災学習を行った。次に,親と離れた場所にいるときに被災した想定(地震または水害)で自身と親の避難行動とその理由を記述する5分間の避難行動思考課題への回答が求めた。避難行動思考課題終了後,避難時危険箇所等の防災知識,または価値観知識のいずれかが5分間提示し、その後,5分間の避難思考課題への回答が求めた。2回目の避難行動思考課題終了後,5分後または1週間後に,無作為な順序で21項目の評価項目が提示される評価課題に対して5件法での回答を求めたところ、概ね、想定した学習効果が得られることを確認した。自身と親の避難行動を考える中で価値観について考えることが,家族の中の自分について考える契機ともなり,家庭防災に対する主観的規範が高まり,家庭防災行動意図が生成された可能性が考えられる。また,防災知識を与えられるのではなく,避難行動の指針となる価値観について考える契機が与えられることで,避難行動についての熟慮が促され,より災害リスク認知と災害不安に対する感度が上がった可能性が考えられる。これらの結果は,防災教育として防災知識を与えるだけでなく,価値観に関する前提知識を与えることが家庭内防災行動意図を高めることを示すものであるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度においては、学習目標オントロジーの構築と防災協調学習目標のモデル化を目的としていたが、オントロジー構築後に、学習プログラムの試行実験を実施したため、モデル化に遅れが生じた。しかし、試行実験により、学習プログラムの有効性が概ね確認できたため、次年度はこのデータをもとに、着実にモデル化を進めることができると考えている。なお、試行実験の結果については、認知心理学会の大会での口頭発表、論文投稿を予定しており、計画は予定よりやや送れているが、初年度としては十分な成果が得られたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画に準じて、以下の2点について研究を進める。 3)防災協調学習プログラムの設計と試行:洪水予報の伝達方法や避難場所を記載した洪水ハザードマップ等による住民への周知は、2005年の水防法改正により市町村に義務付けられた.しかし、ハザードマップは記載された情報量の多さから一般の利用者がその内容を的確に理解することは必ずしも容易でないと言われている.そこで,開発するプログラムにおいては,防災協調学習に先立って,関西大堀研が開発したハザードマップ基礎知識の習得・災害状況の想像力訓練を実施し,防災協調学習のレディネスを高めることとする.本研究で開発する防災協調学習プログラムは,以下の4段階から構成し,2家族を被験者とする試行実験を行う.(1)ハザードマップからの危険の認識:協調学習媒体を用いて,災害と家族が置かれる状況を想定する.(2)避難指針の策定と避難計画立案:想定災害下で望ましいと思われる行動計画を個別に策定し, マップ上に表現すると共に,その計画立案の根拠(災害状況,家族の状況,判断断指針)を記述し,自分の考えの説明方法を考える.(3)他の家族の避難案の推定:他の家族メンバーが考えがちな避難行動を推定し, マップ上に表現する.(4)議論能力・態度の形成,議論の習慣化:家族メンバーがそれぞれ作成した行動計画を持ち寄り,より良い行動計画を意識して,互いの状況認識の仕方や基準とした指針の適切さ等を議論する. 4)防災協調学習プログラムの実証: 能美市市役所防災対策室・能美市防災ネットワークと連携して6家族の被験者を募り教育プロラムの実証実験を行い,データを収集する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度において、教育プログラムの試行実験の実施を優先したため、システム開発を実施しなかった。開発にかかる費用(物品・謝金・人件費・謝金)が繰り越され、次年度使用額となった。 次年度にシステム開発を実施するため、次年度使用額は当初配分の平成26年度予算に加えて、システム開発にかかる費用(物品・謝金・人件費・謝金)として支出する予定である。
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