平成26年度は、(1)実地調査の拡大と(2)システム開発を行った。 (1)実地調査の拡大:防災行動の指針となる価値観表出のための価値観再考の契機として,価値観に関する前提知識の教示が家庭防災行動意図に与える影響について検討を加えた。その結果、自身と親の避難行動を考える中で価値観について考えることが,家族の中の自分について考える契機ともなり,家庭防災に対する主観的規範が高まり,家庭防災行動意図が生成された可能性が考えられる。また,防災知識を与えられるのではなく,避難行動の指針となる価値観について考える契機が与えられることで,避難行動についての熟慮が促され,より災害リスク認知と災害不安に対する感度が上がった可能性が考えられる。これらの結果は,防災教育として防災知識を与えるだけでなく,価値観に関する前提知識を与えることが家庭内防災行動意図を高めることを示すものであるといえる。この結果を踏まえて、石川県内灘町の住民と協働で、防災地図の協調作成システムの開発を進め、教育プログラムの開発を進めている。 (2)災害時被害行動の学習環境として、火災時の建物内の被害行動シミュレータを開発した。学習者は、エージェントに対して、情報収集力、性格、移動可能性を設定することで、様々な挙動を観測することができる。シミュレータが提示するアウトプットは、理論的基盤はなく再現性がないことを学習者に教示したうえで、実際の火災現場でどのような行動が妥当であるかを考察するタスクが与えられる。システムの試用では、具体的な事象で問題を吟味することが有用であることが確認された。その一方で、迫真性が乏しい(現実とは一致しない可能性がある)ことから、ゲーム感覚の興味本位の議論が行われることがあった。このような問題において、どのように脱文脈化学習目標(状況に依存しない防災行動知識)を設定するかが今後の課題である。
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