昨年度は,双方向学習のより多角的な検討を行うために,自然演繹に加えて,覆面算を課題とする新たな学習環境の構築に着手した。ここでは,2つの活動をリンケージさせることにより,自らの認知処理に対する省察が促進され,ひいては認知処理を外化する能力の向上につながることが期待される。さらに,人間の内的要因(知識や方略)の小さな差異が,問題解決行動や問題解決プロセスに多大な影響を与えることになるといった,知識や方略といった人間の内界にある要因と,外界に出力される行動との関連に関する深い洞察に導くことを意図している。 今年度は,実現された学習環境を実践的に使用し,その学習効果を検証した。まずは,単独学習においても,2/3程度の学習者が,本学習環境を使用することで,認知処理を外化することに成功した。システムをグループ活動に対応できるように改良することで,さらにその割合は3/4程度まで向上した。さらに,実験を通して,そこでの学習が,覆面算から筆算の問題解決等,比較的近接した領域の問題へ転移されることなどが確認された。
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