研究課題/領域番号 |
25560111
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
後藤 明史 名古屋大学, 情報基盤センター, 准教授 (50225645)
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研究分担者 |
平山 勉 名城大学, 教職センター, 准教授 (50250866)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 授業研究 / 映像記録 / アイトラッキング / 教師教育 / 教職教育 |
研究概要 |
授業をビデオカメラで撮影することで多面的な要素を客観的に記録できる映像記録に、教師の注視点という要素を加え、授業の映像記録に授業実施者の主観的な要素を記録可能な映像記録システムを開発している。熟練教師と初任者教師や教育実習生など経験差による注視点の差異を比較分析する手法を開発し、授業実践能力と教師の注視点との関連性について明らかにしていく。 授業の実施に際して、授業者の注視点の記録のために、ナックイメージテクノロジー社製モバイル型アイマークレコーダEMR-9帽子タイプ(以下アイトラッキングカメラと呼称する)を使用した。さらに別のビデオカメラを、主に授業者の教授行動をとらえるために教室後方に1台、子どもの様子をとらえるために教室斜め前方に1台設置し、アイトラッキングカメラの映像と時間軸を合わせて合成画面を作成し、さらに画面上にタイムコードを挿入した映像を編集し、これを分析のための基礎資料(以下映像記録と呼称する)とした。 大学でのリハーサル収録の後、あま市立伊福小学校において、2013年9月5日、6日、13日、19日に、以下の3名の授業者に対して各2回の授業の収録を行った。教育実習生としてM大学4年生(伊福小学校学生ボランティア、2014年4月より小学校教諭着任予定)、中堅教師として権田三希子教諭(授業実施クラスの5年生担任、教職歴14年)、ベテラン教師として衛藤義隆教頭(教頭1年目,教職歴28年)の授業を収録した。 授業終了後、直ちに授業を撮影した映像の編集を行い、合成画面を作成した。合成画面を大型モニタで再生しながら、授業者、衛藤教頭、研究代表者、研究分担者らが授業の振り返りを行い、これをビデオカメラで撮影した、このときに、授業者にはアイトラッキングカメラを装着してもらい合成画面のどこを見ているかを記録した。この映像記録をもとに分析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年次の研究計画である、(1-a) 教師の注視点と従来の映像記録を統合した映像記録システムの開発を実施する、(1-b) 教師経験や授業における意思決定と注視点の関連性の分析を実施する、のうち、1-aは終了し、1-bは一部を残しているが、2年次の計画である、(2-a)システムの改良、ティームティーチング(以下TTと呼称する) への適用を検討する、(2-b) 前年度項目の検証と教育実習生の授業実践能力育成カリキュラムへの適用について検討を行う。(1-b) で抽出された知見を教育実習の事前指導など具体的な指導に取り入れる方法を提案する、のうち、TTへの適用を1年次に試験的に行うことができた。以上の理由から、本研究はおおむね計画通り、順調に進展していると考える。 なお、これまでの成果を教育工学会研究会、大学教育研究フォーラムで発表を行い、活発な質疑応答があったほか、国際シンポジウムでの発表の打診を受けるなど、評価を得ていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年次の計画を着実に実施していくとともに、成果の発表を積極的に行っていきたい。リハーサルを体験した学生から寄せられた感想や、授業の振り返りの中で得られた衛藤教頭の指摘の検証の他、映像記録を精査する中から経験差による注視点の差異をさらに詳細に分析し明らかにしていきたい。また、授業を収録した授業者のうち、M大学4年生の学生は平成26年4月に小学校教諭になることが内定しており、是非とも追跡記録を行い、1年次の記録との比較検討を行いたい。半年間の教職経験での授業スキルの変化を抽出していきたい。 中堅、熟練教師から抽出した授業実践のスキルを初任者教師及び教職課程履修生にいかに伝達していくかという点において、カリキュラム開発につなげ、可能なら一部を教職課程の授業や、課程外の自主勉強会で実践を行いたい。 成果発表については、2回程度の学会発表を行い、予算面などの事情が許せば、先の発表で打診を受けた国際シンポジウムでの発表につなげたい。 さらに、本研究の成果を元に、授業の多元的記録・分析・構成方法の開発についての研究を深めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
アイトラッキングカメラのレンタル時に、業者より機器設定と使用説明のための技術者が派遣される予定であったが、業者の都合のよりこれが実現せず、その費用が不要になったためである。なお、機器の設定、使用方法は、レンタル機材に添付されていた使用説明書を熟読することにより習得したため、研究の遂行に支障はなかった。 平成26年度分の使用計画に計上できなかった費用に充てる予定である。具体的には収録した授業の授業記録作成(映像記録からの文字起こし)の人件費に加えて、授業の振り返りの映像記録の文字起こしをする必要が生じたので、この人件費に使用予定である。
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