研究課題/領域番号 |
25560116
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
山川 修 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (90230325)
|
研究分担者 |
黒田 祐二 福井県立大学, 学術教養センター, 准教授 (10375454)
伊藤 雅之 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (60340139)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ポジティブ心理学 / ポジティブ感情 / ネガティブ感情 / 学習行動 |
研究概要 |
調書で記述した3つのポジティブ感情とネガティブ感情の比(P/N比)を測る指標(フレドリクソンの指標、日本語版PANAS、一般感情尺度)を検討し、フレドリクソンの指標を採用することとした。その理由は、日本語版PANASおよび一般感情尺度は、現在の感情の測定だが、フレドリクソンの指標は、1日の状態を示す指標であり、またそれを何日か実施し平均を取ることにより、比較的安定した結果を得ることができるからである。 今年度は、フレドリクソンの指標を使い、15人の初年次ゼミの中で、1週間×2回(合計14回)のP/N比の測定を行った。その結果、フレドリクソンが指摘するP/N比が3(閾値)を越える学生は存在しなかったが、ポジティブ感情とネガティブ感情の分布に違いがみられることがわかった。ポジティブ感情は少ない学生から多い学生まで連続的に存在するが、ネガティブ感情に関しては、少ない学生と多い学生のクラスタにきれいに分かれることが分かった。これはフレドリクソンによっても指摘されていない結果であり、P/N比の文化的差異の可能性がある。 ポジティブ感情、ネガティブ感情、およびP/N比と成績の関係も予備的に調べたが、特に相関がある項目は見つけられなかった、しかし、ある学習行動に関しては、ネガティブ感情の多い群(6人)と少ない群(9人)であきらかな違いがみられた。具体的には、2回目のP/N比測定のためのアンケートの回収率が、ネガティブ感情が多い群では低く(44.4%)、少ない群では高く(83.3%)なった。 しかし、まだ事例数が少ないので、ネガティブ感情の多寡で分けるべきか、ネガティブ感情+ポジティブ感情(つまり一般的な感情)の多寡でわけるべきか判断できていない。ただ、学習行動と2つの感情の指標の間になんらかの関係がありそうだということは言えるのではないかと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ポジティブ心理学の知見に基づき,学習者のポジティビティが学習効果向上にどのように影響を及ぼすかを明らかにすることである。いいかえると、学習者の内面を整えることが、学習効果向上に結び付くかどうかを検証することである。具体的には、教育・学習分野におけるポジティビティを測定するのに適した方法を開発し、実際の授業の中で、ポジティビティを高める手法を適用しながら,学習効果の向上が図れるかどうかを検証することである。 現在までに、学習者のポジティブ感情(とネガティブ感情)を測定する指標を確定し、その指標でみると、日本人に大学生が大きく分けて2つのグループに分かれることを確認した。その指標と学習効果の関係はまだ明らかでないが、指標と学習行動の間には一定の関係がある可能性が存在することも確かめた。また、内発的学習意欲を測る指標は開発していないが、教学IRに関係するアンケート調査から、自主的に学習する学生タイプが特定されており、そのタイプに属する学生は内発的な動機づけが高いと考えられるので、このデータを利用することにより、P/N比と内発的な動機づけとの関係も明らかにすることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の今年度の目標は、P/N 比を測定する指標を使いポジティビティと学習効果の関係を検証することである。昨年度、フレドリクソンの測定方法を用い15人の学生を対象に、P/N比を測定し、大きく分けて2つのグループに分かれることを確認した。また、P/N比の指標と、学習行動が関係する可能性があることが示唆できた。 今年度は、これを発展させ、学習効果との関係を調べていく。また、測定する対象も100名程度まで増やし、結果の精度をあげていく。さらに、内発的動機づけとの関係を調べるため、教学IRデータとのクロスをとり、P/N比の指標と学習効果、P/N比の指標と内発的動機づけとの関係を明らかにしていく。そのために、必要であれば、相関分析、重回帰分析、SEM、ネットワーク分析、テキストマイニング等、統計的解析手法を駆使して行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた原因の一つは、メンバーが予定通り情報収集や発表のための出張に行けなかったためである(旅費)。また、当初予定していた大規模調査を、システム的な準備の必要性が認識されたため、昨年度の実施を延期したこともその原因の一つである(人件費・謝金)。 今年度は、成果発表のための出張を多く行う(旅費)。また、大規模調査のためのシステムの準備に予算を利用する(物品費)。また、学習成果の測定のため、ビデオ映像も利用するので、ビデオからの文字起こし等(人件費・謝金)にも積極的に利用させていただく。
|