本研究の目的は、奥行きや凹凸を直接的に表現できる立体映像を、どのように利用すれば教育学習面で効果があるのかを解明し、学校教育における立体映像の使い方を提案することである。これまでの検討から、小学6年生の社会科の学習に3D教材を用いることで、写真や教科書などの2D映像からは分かりにくい、特徴的な気づきや発見を促す効果が3D映像にあることが分かった。 最終年度は、これまでの授業実践での成果を発展させ、3D教材の機能的価値を具体化するために、歴史の探究的な学習に着目し、3D教材を用いることでどのような効果をもたらすのかを検討した。具体的には、小学6年生の古墳時代の学習において、通常の授業を行った後に、3D教材を用いるクラスと2D教材を用いるクラスの2つに分けて、授業実践を行った。3D教材の表示には49インチの3Dテレビを用いて、児童は偏光式3Dメガネをかけて視聴した。なお、2D教材は3D教材と同じ映像内容であった。探求的な活動では、学習者自身が疑問を生成することが重要となるため、本研究では、多様な疑問を児童に持たせられることを、教材の効果と位置づけた。その結果、児童から出た疑問数は、2D教材と3D教材ともに、通常の授業後よりも増加し、特に、3D教材の体験後の方が、2D教材よりも疑問数の平均が約1.5個多かった。また、疑問の内容に注目してみると、3Dクラスで生成された疑問や教材使用後の活動内容の結果から、埴輪が不規則に配置されている理由や埴輪の鼻の長さの理由など、2D教材では気付きにくい立体形状に注目した疑問が生成されることが分かった。 本研究課題により、3D教材を用いることで社会科の学習に良い効果があることが分かった。教育における3D映像の効果的な活用のために、今後は他の教科や単元でも検討を行い、3D映像の機能的価値を体系化していくことが必要であると考えられる。
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